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13歳、15歳、20歳が知っておくべきこととは? 親子でシェアしたい「お金」の本3選

父が子に伝える 13歳からのお金に一生困らないたった3つの考え方

 止まらない円安。止まらない物価高。そんなニュースを連日見聞きするうちに、経済について、お金について、もっと知りたくなった人は多いだろう。

 大人になってから、これ学校で教えてほしかった! と思うことはよくあるが、お金もその1つ。

 円安って? と子どもに聞かれたときに、せめて基本だけでも答えられる親でありたいし、子どもには早いうちから知っておいてほしい......。そんな親心に応える本のなかから、タイトルの「13歳」「15歳」「20歳」が目を引いた3冊をピックアップして紹介する。

 親から子へ、先生から生徒へ、池上彰さんから幅広い年齢層へ。設定もテーマも語り口も三者三様で、それぞれに面白い。

13歳になったら教えたい「お金の話」

■石原 尚幸 著
 『父が子に伝える 13歳からのお金に一生困らないたった3つの考え方』(三笠書房)


 著者の石原尚幸さんは、経営コンサルタントであり2児の父でもある。本書は「子供にこれだけは伝えておきたいと考える『お金に困らないための原理原則』」を、石原さんが自身の子供に語りかけるスタイルで進んでいく。

 どうすればお金の苦労から解放されるのか? 石原さんが四半世紀のキャリアのなかで見出した1つの答え、それは「1 お金を上手に稼ぐ」「2 お金を減らさない工夫をする」「3 お金を賢く貯める」というシンプルなものだった。

 この3つのサイクルを回していけば、お金の苦労とおさらばできる。子供が中学生(13歳)になった頃くらいから、普段の会話を通じてこうした「お金の話」をしてきたそうだ。本書では、お金を「稼ぐ」「減らさない」「貯める」にはどうするか? について、事例をまじえて書いている。

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 ここでは1章の「お金を稼ぎたいなら、『うまくできること』をやろう」から、将来の仕事探しのヒントになる4つの窓を見てみよう。

 1つ目は「好き」で「できる」こと=プロの窓。2つ目は「好き」だけど「できない」こと=趣味の窓。3つ目は「嫌い」だけど「できる」こと=黄金の窓。4つ目は「嫌い」で「できない」こと=他人の窓。さて、このなかで一番稼げるのはどの窓?

 答えは、黄金の窓。1つ目の「好き」で「できる」こと=プロの窓がベストだが、いきなりそこにたどり着ける人はほとんどいないという。そこで、3つ目の「嫌い」だけど「できる」こと=黄金の窓。

 「嫌い」というのは、たいして努力していないのに人に褒められたり喜ばれたりする、という意味。神様が与えてくれた「才能」といえる。

 「まず、その才能が自分にはあると信じること。そして、何気なく人に褒めてもらったり、人の役に立ったりしたことをよく覚えておくといい。それが、君の『黄金の窓』となる。君が人より上手にできること。そこに成功の鍵がある」

 

高校生がズバリ問う「お金持ちになるには?」

■奥野 一成 著
 『15歳から学ぶお金の教養 先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』(ダイヤモンド社)


 著者の奥野一成(おくの かずしげ)さんは、プロの投資家から約4000億円の資産を預かり、運用実績を上げ続けるファンドマネージャー。

 2022年度から、高校の家庭科の授業に「投資」が組み込まれた。しかし、投資に詳しい先生は多くないことから、奥野さんが呼ばれ、高校生に「お金」の仕組みを説明することに。本書は「お金持ちになるにはどうしたらいいのか、知りたいです」という高校生の率直な疑問を発端に、先生と生徒の対話形式で進んでいく。

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 お金持ちになるために大切な第一歩、それは「お父さんお母さんや先生の言うことを、鵜吞みにしない」こと。反抗しろという意味ではなく、過去の常識はもはや通用しないという意味だという。

 日本の景気がよかった1990年以前は「モノの時代」。次から次へとモノを作るには、均質的かつ一定水準を上回る能力があり、命令に従う従順さを持つ労働者が求められた。しかし、バブル経済が崩壊して需要が縮小。1990年以降は「モノ余りの時代」に。

 すると今度は、社会の課題・問題を解決するアイデアを生み出した人が、世の中を動かすように。この時代に求められているのは、「アイデア」だという。たとえば銀行や商社の場合、仲介のみで何の付加価値も生まないビジネスのままでは廃れていく、と見ている。

 「今の世界だけを見ていてはいけません。より先の未来を想像して、見通す力が必要とされているのです。さはさりながら、どれだけ世界が変わっても、変わらないものがあるのも事実です。それは、『付加価値の提供』をできた人が成功するという真実です」

 

かつて20歳だった人も「お金のきほん」を総復習

■池上 彰、「池上彰のニュースそうだったのか!!」スタッフ 著
 『20歳の自分に教えたいお金のきほん』(SB新書)


 特に若い世代に素朴な質問を投げかけてもらい、解説する取り組みをしてきた「池上彰のニュースそうだったのか!!」(テレビ朝日系列)。本書は、編集者からの「番組を本にしませんか?」という提案から生まれた1冊。

 円の値段はなぜ変わる? なぜ株は儲かる? 一生で払う税金の総額は? 日々のニュースを理解するには、経済の基礎知識がどうしても必要で、お金を増やしたいと思ったら、正しい知識を持つことが大前提だという。

 そこで本書は、「20歳の頃に、これくらいのことを知っておくべきだったなあ」と悔やんでいる人、「20歳までに、これくらいのことは知っておくべきだ」と考えている若者のために、経済、税金、投資の基本からやさしく、そして具体的に解説している。

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 ここでは、もはや知らないわけにはいかない「円高・円安」を見ておこう。

 「円高」とは、円の価値が上がる=円で買うと安くなること。「円安」とは、円の価値が下がる=円で買うと高くなること。たとえば1ドルのチョコレートの場合、1ドル=100円なら100円で買うところを、1ドル=90円なら90円で買える。前者が円安、後者が円高となる。

 つい先日のニュースで、約32年ぶりの円安水準更新とあった。そもそも、なぜ毎日のように変化するのか? 一体裏で何が行われているのか? と思うわけだが、それについてもバッチリ解説している。

 お金の交換は、基本的に物の売り買いと同じ。100円を1ドルと交換することは、100円を払って1ドルを買うこと。円高・円安になるのは、円が交換(売り買い)されているから。特に投資家が儲けようとして、安いときに買って高いときに売ることを、毎日、1分2分単位でやっているそうだ。

 たとえば日本の景気が回復しそうだとなれば、円の人気が高くなり、円を買う人が増えて円高に。逆に人気がなくなれば、円を売る人が増えて円安に。そんなことが日々繰り返されているという。


 


 以上の3冊は、小学校高学年、中学生くらいから1人でも読めるだろう。ちなみに、お金の知識も関心もさほどなかった評者もサクサク読めた。これからは「マネーリテラシー」(お金の正しい知識・情報を持ち、うまく活用できる能力)が絶対必要になるという。気になる1冊から読んでみて。


■石原尚幸さんプロフィール
 1973年、愛知県名古屋市生まれ。コーヒー卸商「石原珈琲商会」の三男として育つ。幼少の頃から父の配達についていき、「明日の売上がなかったら、お前の目の前のごはんは食べられないんだぞ」と言葉をかけられていたのが、自分の商売の原点。上智大学経済学部経営学科卒業後、大手石油元売に入社。日本一ガソリン代が安い激戦区に特約店の担当営業として赴任。赤字となってしまった大手特約店にて、2年間で3億円のV字回復を実現したことが評価され、31歳で社長賞を受賞。34歳で独立起業後は、現場で培った経営改革ノウハウに、ファイナンシャルプランナー資格(1級FP技能士)、MBA修得で得た知見も併せ、成果にコミットするV字回復メソッドを体系化。「売上に偶然はあるが、利益に偶然はない」という理念のもと、社外にいるものの、社長の傍らに寄り添う「社外参謀」としてクライアントのビジョン実現へ邁進している。著書に『社長! お金は「ここだけ」押さえれば会社は潰れない~2枚のシートで利益とキャッシュを確実に残す!』(ダイヤモンド社)がある。

■奥野一成さんプロフィール
 農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC)常務取締役兼最高投資責任者(CIO)。京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。14年から現職。バフェットの投資哲学に通ずる「長期厳選投資」を実戦する日本では稀有なパイオニア。その投資哲学で高い運用実績を上げ続け、機関投資家向けファンドの運用総額は約4000億円。更に多くの日本人を豊かにするために、機関投資家向けの巨大ファンドを「おおぶね」として個人にも開放している。著書に『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』(ダイヤモンド社)など。

■池上彰さんプロフィール
 1950年、長野県松本市生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、NHKに記者として入局。さまざまな事件、災害、教育問題、消費者問題などを担当する。94年4月から11年間にわたり「週刊こどもニュース」のお父さん役として活躍。わかりやすく丁寧な解説に子どもだけでなく大人まで幅広い人気を得る。2005年3月、NHKの退職を機にフリーランスのジャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍、YouTubeなど幅広いメディアで活動。16年4月から、名城大学教授、東京工業大学特命教授など、9大学で教える。おもな著書に『伝える力』シリーズ(PHPビジネス新書)、『知らないと恥をかく世界の大問題』シリーズ(角川SSC新書)、『なんのために学ぶのか』(SB新書)など、ベストセラー多数。



         
  • 書名 父が子に伝える 13歳からのお金に一生困らないたった3つの考え方
  • 監修・編集・著者名石原 尚幸 著
  • 出版社名三笠書房
  • 出版年月日2022年7月 5日
  • 定価1,650円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・256ページ
  • ISBN9784837928997

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