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煙たがられる「正論」......でも、伝え方次第で人を動かせる。

人を動かす「正論」の伝え方

 「正論」と聞くと、どんなイメージがあるだろうか。正論ばかり言う人は面倒くさい? 現実は正論の通りにはいかない? あまりいいイメージを持っていない人が少なくないのではないだろうか。

 正論を伝えようとすると反感を買うので、いつも自分の意見は押し殺して周りの空気に合わせている......という人もいるかもしれない。確かに、正論は相手にとって受け入れがたい場合があるなどリスクを伴う。しかし、正論は伝え方次第で相手を動かすことができる。著書『人を動かす「正論」の伝え方』(クロスメディア・パブリッシング)で「いかに正論を伝えるか」を伝授してくれるのは、社会工学者で内閣官房参与を歴任した藤井聡さんだ。


 藤井さんは内閣官房参与時代、日本の官僚たちすら、正論なき判断停止状態に陥っていると感じたそうだ。正論よりも周りの空気を優先して合わせる、あるいは正論を度外視してただ優位に立つためだけに他人を論破する......そんな人が今の日本には多いと、藤井さんは指摘する。

「かくあるべき」という強い思いによって生まれた考えや理想、誰が聞いても「一理ある」と腑に落ちる論理=正論こそが、いまの時代に求められているのではないでしょうか。
(「はじめに」より)

 藤井さんは学者として、権力におもねらない正論を伝え、広めてきた。たとえば、本書「はじめに」には国債に関する藤井さんの見解が書かれている。「国債による国家の赤字は1220兆円であり、国民一人当たり1000万円近い借金がある」という話は、みなさんも聞いたことがあるかもしれない。こう聞くと不安になるが、藤井さんは冷静にこう指摘する。

国債を発行して借金をしているのは日本政府であり、国民一人ひとりではありません。国債を買うのは銀行が中心です。その銀行のお金は誰のお金かと言えば、国民の預金が大半なのです。ということは、国民は債務者ではなく、国にお金を貸している債権者なのです。
(「はじめに」より)

 「国家の借金がそのまま国民の借金」であるという説明は、「論理のすり替え」であり、正しい認識ではないのだ。これを知るだけでも、「正論」の力が十分に感じられるのではないだろうか。

 一方で、冒頭でもふれたように、正論は出し方を間違えると反感を買って潰されてしまう。実際、藤井さんが国債に関して持っている理論は、財政にこだわる官僚や政治家から嫌われている理論だそうだ。では、そんな中で藤井さんは、正論をどのように伝えてきたのだろうか?

 「『方便』でわかりやすく伝える」「上司が採用したくなる装いを施す」「自分と一心同体の『コア層』を作る」など、日常生活でもビジネスでも使える、反発を招かず正論を通す秘策を伝授。中でも、藤井さんが大阪都構想の反対運動を起こし、否決・事実上の廃案に持ち込んだ体験記は必見だ。

 本書で上手な伝え方を身につけて、意見を押し殺していた自分を卒業しよう。

【目次】
はじめに 正しいことほど伝え方が難しい
第1章 正論とは弱者が強者に立ち向かう唯一無二の武器
第2章 人を動かすために必要な「方便」の使い方
第3章 正論の「組み立て方」と「通し方」
第4章 「敵」を説得する前に「味方」を増やすことが大事
第5章 人を動かすには「諦め」「意地」「媚び」が必要

■藤井聡(ふじい・さとし)さん
1968年、奈良県生まれ。京都大学大学院工学研究科教授。京都大学工学部卒業、同大学院修了後、同大学助教授、イエテボリ大学心理学科客員研究員、東京工業大学大学院教授などを経て、2009年より現職。2012年から18年まで、安倍内閣において内閣官房参与。2018年よりカールスタッド大学客員教授、並びに『表現者クライテリオン』編集長。 著書に、『こうすれば絶対よくなる! 日本経済』(田原総一朗氏との共著・アスコム)、『ゼロコロナという病』(木村盛世氏との共著・産経新聞出版)、『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』(ポプラ社)など多数。


※画像提供:クロスメディア・パブリッシング


   
  • 書名 人を動かす「正論」の伝え方
  • 監修・編集・著者名藤井聡 著
  • 出版社名クロスメディア・パブリッシング
  • 出版年月日2022年9月 1日
  • 定価1,738円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・256ページ
  • ISBN9784295407362

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