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「人は目標を適切に設定できない」自己啓発書の落とし穴とは?

  • 書名 『やりたいことだけやって人生を良くする わがままリスト』
  • 監修・編集・著者名山岸洋一
  • 出版社名イースト・プレス

夢や目標を持つことの大切さは嫌というほど教えられるが、実際に夢を叶えられる人はごく一握りということも、大人になるにつれてわかってくる。

では、なぜ私たちは夢や目標を実現できないのだろうか?
努力を継続できないからだろうか。それとも努力のやり方がまちがっているのだろうか。

その可能性もある。ただ「夢や目標が適切ではない」という可能性もある。『やりたいことだけやって人生を良くする わがままリスト』(山岸洋一著、イースト・プレス刊)はそんな可能性にも気づかせてくれる。

人はなぜ目標や夢の設定を誤るのか。そして適切な目標とは一体何なのか?今回は著者の山岸洋一さんにお話をうかがった。

■いいことばかりではない 「初志貫徹」の弊害は?

――『やりたいことだけやって人生を良くする わがままリスト』は一般的な「成功法則」の本とは一線を画す内容でした。この本で山岸さんが一番伝えたかったことはどんなことですか?

山岸:一つは「今、もうすでに新しい時代に入っている」ということです。21世紀が始まって最初の20年が過ぎたところで、21世紀が始まった当初からずいぶん人の考え方や意識も変わってきています。

そうなると「どうしたら人は幸せになれるのか」「どうすれば人生をより良く生きられるのか」という問いに対する答えも変わるはずなのですが、それを指南する分野に関しては、まったく変わっていません。

――それはおっしゃるとおりで、いわゆる「成功法則本」と呼ばれる本の内容は変わっていない印象があります。

山岸:世の中が変わり、人の意識が変わってしまっている以上、幸せや成功を求めて知識を得ようとしても、その知識が古いままだとかえって足かせになりかねません。そろそろ21世紀流の、新しい時代に合ったやり方を世の中に発信した方がいいのではないかという問題意識のもとで書いたのが今回の本です。

――成功法則は時代に左右されない普遍的な真理という装いで本に書かれることが多いですが、実際はそんなことはないのでしょうか。

山岸:もちろん普遍的な部分もあるんです。私自身、フランクリン・コヴィー社の日本法人で『7つの習慣』をずっと扱っていましたから、そこで書かれていることの普遍性はよく理解しています。

ただ、それこそ『7つの習慣』のような古典的名著で書かれているような普遍的なこと以外にも大事なことはあって、それは時代とともに変わっていきます。その変わっていく部分にも対応しないと、やはりうまくいかないんです。

――この20年間で成功法則はどのように変わってきたのでしょうか。

山岸:2000年前後の自己啓発書として象徴的なのが『金持ち父さん貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ著)と『チーズはどこへ消えた?』(スペンサー・ジョンソン著)です。

『金持ち父さん貧乏父さん』は当時アメリカ社会で起きていた不動産投資をめぐる様々な変化を上手にピックアップした本で、まさに「普遍的ではない部分」の本でした。『チーズはどこへ消えた?』は、僕も著者にお会いしましたけども、「とにもかくにも変化が激しくなっている世の中で生き抜くためには、変化に対応するスキルを身につけないといけない」という内容で、やはりこれも時代に即したものでした。

翻って今の状況を見ると、人はまだ変化にどう対応していいかわからないし、原理原則に基づいた普遍的な部分よりも表層的なところで何をすればいいかという具体的な策がなく、もがいている。そんな状況が今だといえます。

――本書でテーマになっているのが「人は目標を適切に設定できない」という点です。これは、これまでの成功法則の根本を揺るがすテーマですよね。

山岸:目標を適切に設定できていないせいで、計画を立てて実行してもうまくいかないというケースが非常に多いんです。だから、目標を立てられない人でもうまくいって幸せになれる方法を考えない限り、多くの人は幸せになれません。

――様々な自己啓発書を見てみても「目標を設定すること」と、「目標を追うこと」は大切だとされる一方で、「目標の立て方」や「追い方」はあまり注目されることがなく、本書ではそこに踏み込んでいます。

山岸:そうですね。僕がフランクリン・コヴィー社の日本法人にいた頃、コヴィー博士に直接話を聞いたことがあるのですが、うまくいく人って目標を設定してから変更するまでの時間がすごく短いんです。朝立てた目標を夕方に修正していたりする。

――そうやって目標自体を最適化していくんでしょうね。

山岸:そういうことです。最初に立てた目標に固執するのが良くなくて、状況によってどんどん変えていけばいいのですが、どういうわけか日本人はあまりこれが好きじゃない。

――「初志貫徹」を良しとするところはあります。

山岸:一方でアメリカ人のできる人たちを見ると、本当に軽やかに目標をどんどん変えます。それって「逃げること」とは違っていて、あくまで「最適化」なんです。こういう部分は日本人にも必要だと思います。

――他人や社会から強いられた目標設定ではなく、自分の内側から湧き上がってくる欲求に従って目標を立てるために、本書で提唱しているのが「わがままリスト」です。このわがままリストについて詳しく教えていただきたいです。

山岸:「やりたいこと」を100個紙に書き出して作るリストです。最初のうちは借り物の夢といいますか、自分の内側から湧き上がってくるものは出てこないと思いますが、それでもいいんです。

この本に書いているやり方で毎月リスト作りを繰り返していくと、だんだんと自分が本当にやりたいことに気づくようになっていきます。最初は社会に要求されている「こうあるべき」が反映されていても、だんだんと純度があがって心からやりたいことを書けるようになっていきます。こうなってくると強いですよね。

――今回の本のゴールは「幸せに生きること」なんですか?

山岸:幸せや成功を細かく定義すると長い話になってしまうので、「人生がうまくいっていないな」と感じている人が、少しでも人生がいい方向に進んだり、幸せを感じられていることを実感できるところがゴールでしょうか。この本で書いていることを繰り返していけば、自分が以前とは違ってきていることに徐々に気づいていただけると思います。

人生がうまくいっていないと感じつつ、それを変えるための行動を起こせない人は、簡単にいえば「エネルギーを失っている状態」なんです。わがままリストで自分が本当にやりたいことを思い出すことで、人生を前に進めるエネルギーや人生に変化を起こすエネルギーが少しずつ戻ってくるはずです。

(後編につづく)

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