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戦略コンサルが明かす「知らないうちに評価が下がるポイント」

  • 書名 『変える技術、考える技術』
  • 監修・編集・著者名高松智史
  • 出版社名実業之日本社

職場で評価されていないと感じたり、努力が報われないと、フラストレーションがたまるもの。ただ、くさったりやる気をなくしたりする前に、自分の仕事を振り返ってみると打開策が見つかるかもしれない。

『変える技術、考える技術』(実業之日本社刊)は、ボストンコンサルティンググループ(以下、BCG)でマネジャーを務めた高松智史さんが「報われない自分」から抜け出すための「スウィッチ」を授けてくれる一冊。

行動を変えれば、結果も変わり、周囲からの評価も変わる。では、行動をどのように変えればいいのか。本書を下敷きに高松さんにうかがった。

■知らないうちに損をしている人たち

――『変える技術、考える技術』は私自身も改めてわが身を振り返るといいますか、高松さんのいう「ポンコツ」になっていないかと不安になる本でした。若手だけでなく、マネジメントにかかわる人にとっても役立つ内容ですね。

高松:岩瀬大輔さんの『入社1年目の教科書』のように、社会人5年目までの方々にはぜひ読んでいただきたいですし、そうした方々を部下やメンバーとして抱える課長、部長にも読んでいただきたいと思っています。読んでいただけたら、「当然、私はやっています」「あ、これはさぼりがちです」「これはマネさせてもらいます」のどれかを叫んでもらえると思います。

――社会人としての「基礎の基礎」のところから実務に直接役立つことまで、仕事の本質的な部分が網羅されているように感じました。「こう使ってほしい」というお考えはありますか?

高松:昨年からリモートワークをする人が増えて、上司と部下の物理的な距離が遠くなりましたよね。上司からしたらそれまでのように、部下に直接指摘するということがしにくくなりましたし、自分たちが上の人に口うるさく言われて身に着けてきたことを、同じように今の若手に口うるさく言うと、嫌われてしまう。

でも、「これ読んでおいて」って本を渡すだけならラクですし、その後の議論の土台になります。そうやって「上司と部下の共通の教科書」として使っていただけたらうれしいです。「この本でこう言っているし」ということで僕を味方にしてもらってもいいですし、「こう書いてあるけど、俺たちはもっと進化させてこうしよう」という使い方もすばらしいと思います。

――本の内容を踏まえて、さらに議論を重ねて発展させていく使い方ができるんですね。

高松:そうです。読んでほしい人としてさらにつけ加えるなら、これから社会に出る大学生にも読んでいただけたら、プラスになることは大きいと思います。社会人になったスタートの時期に、上司や先輩から「こいつ、よく気がつく奴じゃん」と思われたらその後のチャンスも増えますしね。

たとえば他の会社に行ってお茶を出された時に、ちゃんとしている人は片づけをして帰るんですけど、人によっては飲みっぱなしで雑に置いていく。やはりそこで人柄が見えてしまうし、相手からの印象も変わるんですよ。こういうところで損をしている人って意外に多いんです。

――今のお話のような仕事以前の基本的なマナーに属することから、実務的なことまで、高松さんはどのように身に着けていったのかというと、師匠にあたる方や先輩、後輩のふるまいをマネされたそうですね。

高松:できる人ってそもそも意識しなくてもできるんですよ。その部分を自分なりに言語化して知識としてストックしていました。

たとえばコンサルティング会社で働いていた頃、クライアント先にタクシーで移動することが多かったのですが、当時BCGがあった赤坂見附から八重洲のクライアント先までタクシーで行って、どこでタクシーを停めてもらいますか、となったときに、受付の前にドーンと停めてもらうと、「おまえらウチのお金でタクシー乗って来るわけ?」って思う方もいるかもしれないじゃないですか。相手先の方の中には。

――たしかに、あまり目立ちすぎるとよく思わない人はいそうです。

高松:タクシーで行くこと自体は必要なことなんです。電車の中でクライアント企業の機密情報を話すわけにはいかないじゃないですか。

なのですが、タクシーで受付の前まで行ってしまうとよく思わない人もいると。そんな時、想像力のある人は相手先のオフィスの50mくらい前で停めてもらって、歩いていく。

こういうことって、できる人は何も考えずにできるんですよ。無意識にやっている。そういうのを見て「これいいな、やってみよう」となった時に、言語化して残しておくということをしていました。たまってきたら携帯の待ち受け画面にしたりね。

――タクシーのエピソードは、今回の本でいう「愛と想像力」についてですよね。こういうことは、できそうで意外とできない人が多いのかもしれません。

高松:そのとおりです。この本の0章や1章はこういうちょっとしたことで仕事は変わるよというのがテーマになっています。「報われてないな」と自分で思っている人は、この章が役立つはずですし、自分がされてうれしかったことも嫌だったことも言語化して、それをストックしていくことが大切です。それが自分の行動を変える第一歩になるので。

――無意識に相手が心地よく感じることをできる人は、何が違うのでしょうか?

高松:親のしつけもあるのでしょうけど、それ以上に周りの人に怒られた回数とか、怒られた時になぜ怒られたのかを言語化して考えられてきたかというのが大きいと思います。いずれにしても、こういうことは後天的に身につけることができる「スキル」です。決して「センス次第」でも「親のしつけ次第」でもないと思います。

――「愛と想像力」という言葉を頭に入れておくと、確かにあらゆる行動が変わる気がします。目上の人に対してはある程度自然に愛と想像力がはたらくような気がしますが、下の人に対してはかならずしもそうではありません。高松さんご自身、目下の人や立場が下の人に対してどのような「愛と想像力」の行動をしていますか?

高松:「時代遅れ」にならないようにすごく意識しているんですよ(笑)。そのためには若い人のセンスはすごく貴重で、彼らの感覚を大事にしないといけない。「自分の時代」がすべてだと思っている人が何か新しいサービスを生み出すのは無理なので。

じゃあ、彼らの感覚をどうやって知るかというと、接触するしかないじゃないですか。こちらは教えてもらう側ですから、年下の人を食事に誘う時は「ごちそうさせてください」って言いますよ。

――普通は「ごちそうしてあげるよ」なのに「ごちそうさせてください」なんですね。

高松:「ごちそうしてやるよ」って言っちゃう人はポンコツです。誰だって上司と食事するのって気が重いじゃないですか。目上の人と食事するのってみんな基本的に嫌なんですよ。そこをまず理解しないと。

だからこそ、「ごちそうさせてください」なんです。言葉尻だけの話ですけど、相手の気持ちってけっこうそこにひっぱられたりするので。たとえ自分の方が立場が上でも、時代の先端の話を聞かせてもらえるのですから「ごはんを一緒に食べさせてもらっている」くらいがちょうどいいんですよ。

――周りの人に愛されるための「チャーム」も大切ですよね。仕事の実力はさほどではないけれど「この人のためなら力を貸してやろう」と周りに思わせる人もいて、そういう人には例外なく「チャーム」があるものです。

高松:たとえば人を動かすとき、すべてロジックで説明して説得してもいいんですけど、ロジック抜きで「まあ、あの部長が言うなら、いっちょ乗ってみっか」と思わせるのも大事なビジネススキルであって、それこそが「チャーム」の力です。

チャームは、言い換えるなら「ファンを作る力」です。だから「お金を稼ぐこと」にも直結するスキルだと思います。

――ただ、「チャーム」は経験を積んで自信がついてくると忘れがちな気がします。高松さんがチャームの大切さに気づいたエピソードがありましたら教えていただきたいです。

高松:高校時代に「ウィニング受験英語」っていう英語の塾に通っていたのですが、大学生になってから、その塾のチューターのアルバイトをしたんですよ。

男女5人ずつチューターがいたんですけど、男性陣の5人の中の2人が強敵で、慶応に行っていたイケメン男子と、元総理大臣の一族でものすごく頭が良くて東工大に行っていたもう一人。彼らを見た時に「俺、勝てなくない?」と思ったんです。

どうやってこの同期の中で秀でるかを考えた時に、「ユニークさ」であり「周りの人からかわいがられる性格」なんじゃないかと。それで次の日から髪の毛を金髪にしたんですね。金髪で一見不真面目そうなんだけど、めちゃくちゃ礼儀正しくて生徒の親御さんの受けがいいチューターになろうと。それが「チャーム」を意識しはじめた瞬間でした。

――「チャーム」と一言でいっても、正解は一つではなさそうですね。高松さんのように「金髪」と「まじめさ」のギャップを見せることも正解でしょうし。他のやり方もありそうです。

高松:そうですね。生意気だけど愛される人もいるじゃないですか。チャームは十人十色だと思います。

大事なのは大多数のふるまいに当てはまる「標準」を知ることだと思います。それを知ったうえで自分なりに「ズラす」と、周囲から引き立つユニークさが出るのではないでしょうか。もちろん、人に迷惑をかけるようなズラし方はダメで、そこは周囲の人への「愛と想像力」を持ってやっていただきたいですね。

(後編につづく)

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