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女性が管理職になるとメリットだらけ? その理由とは

  • 書名 女性が管理職になるとメリットだらけ? その理由とは
  • 監修・編集・著者名東谷由香
  • 出版社名日本経済新聞出版

今、女性が仕事を持ち、キャリアアップをしていくことが当たり前となっている一方で、働き続けようとすると、さまざまなハードルにぶつかる現実がある。

「産休」「育休」、「時短労働」、「女性活躍推進」といったキーワードが並ぶ「働き方改革」だが、理想通りには進んでいない。そんな中で、働く女性たち自身はキャリアをどう考えればいいのだろうか?

今回は『働き方改革で 伸びる女性 つぶれる女性』(日本経済新聞出版刊)を上梓した、人材育成インストラクターの東谷由香さんにお話をうかがった。「女性は管理職になったほうがいい」と本書で述べる、その理由とは?

(新刊JP編集部)

■女性が管理職になるとメリットだらけ? その理由とは

――東谷さんは本書の冒頭で女性管理職が増えていないことを指摘されています。実際、2019年の帝国データバンクのデータによれば、管理職の女性の割合は7.7%と低い水準にありますが、その原因はどこにあるのでしょうか?

東谷:3つの要因があると思います。

1つ目は人事評価で、産休や育休で会社から離れたり、時短で働くと、フルタイムで働く男性との比較で評価が下がってしまい、管理職候補になりにくくなります。働いた時間で評価するのではなく、短い時間の中でいかに成果を上げたかという基準を持って評価をしてもらわないと、これは解決しません。

2つ目は、柔軟な働き方ができる環境が整っていないことです。特に子どもが小学校にあがり、学童保育が遅くまで預かってくれない「小1の壁」という言葉がありますように、働き続けるのが難しい状況なんですね。コロナ禍以降、リモートワークが推奨されていますが、これを今後も継続してもらい、さらに社会全体で小学生を預かるような仕組みが広がらないと厳しいですね。

3つ目は、男性管理職が忙しそうに見えること。つまり、管理職という仕事が魅力的ではないということです。実際、プレイングマネジャーで自分の業務を持ちつつ管理業務もしているという人がほとんどだと思いますが、そこを是正しないと「自分もできそう」という人はなかなか増えないと思います。一人で抱え込まずに適切に仕事を割り振るマネジメント力を見せてほしいですよね。

――おっしゃった3つは環境要因的な部分が大きいと思います。つまり、女性が管理職として活躍できる土台が整っていない。一方で本書では女性個人の要因についても指摘されています。

東谷:それもありますね。研修をしていて、能力はあるのに自分に自信が持てないという方が多いように感じるんです。背中を強く押されればやるけれど、軽く押しただけでは踏み出さない。また、「リーダーは声高に主張できないといけない」という思い込みがあって、それができない。

女性管理職が増えている企業は、女性の背中を押すということをすごく丁寧にやっていらっしゃいますね。「あなただったら大丈夫。まずはこれだけやってみましょう」とサポートしながら、管理職を育成していくのが上手なんです。そこは女性管理職の少ない企業が学ぶべきところだと思いますね。

――女性管理職の前例が少ないと、自分がどういう風になれるのか分からずに不安になりますよね。

東谷:ただ、男性の姿を見て学ぶ方もいます。男女問わず他者から学べることは多いですから、個々人が意識的に視野を広げることは重要です。

――東谷さんは本書の中で女性に管理職になることを勧めています。そのメリットはどこにあるのでしょうか。

東谷:まずは時間の使い方が自由にできるようになるということです。今でさえいっぱいいっぱいなのに、これ以上時間取れないという人こそ、管理職になるべきでしょう。管理職になると、業務改善施策の提案だけでなく実行もしやすくなるので、自分にとって働きやすい環境をつくれるようになります。

2つ目は、管理職になると仕事が断然面白くなります。自分で考えて動く醍醐味が管理職にはありますし、社内や取引先の重要な話も耳に入ってきます。全体を見る仕事はやりがいがありますし、そういう仕事をしている人は周囲から魅力的に写りますよね。

――時間が取られるのではなく、時間が自由になる。

東谷:より忙しくなりそうなことがネックと思っている人も少なくないでしょう。ただ、管理職になった女性の皆さんに話を聞くと「むしろ自由になった」と言う人が多いですね。

例えば本書の中に出てくる郵船コーディアルサービスの女性は、業務の無駄を見つけて改善したり、無駄な会議を整理したり、業務改善を次々と行っていった結果、みんな残業しないで終わるようになったと言います。女性が働きやすいように制度を整えていくことも管理職だからできたと。

――自分自身の働きやすさが、周囲の働きやすさにつながるわけですね。

東谷:そうです。また、管理職になると人脈が広がるので、いろいろな人と出会う機会が増える。そうなると人生自体が楽しくなってくると口にしています。

■今こそ求められる女性のリーダー

――女性がリーダーである方が、組織の柔軟性が増すという事例はコロナ禍の各国の対応を見るとよく分かります。コロナ対策で成功している国は女性がリーダーである国が多いですよね。

東谷:そうですね。女性は前例のないことを解決することが得意で、口を挟まれたり、阻止されたりすることがなければ、しっかり結果を出せるんです。これからの社会は前例のないことに対応していく時代ですので、女性の力がより必要になるはずです。

――本書で育休の問題点を指摘されていますが、おっしゃる通り、女性が育休に入ってしまうと、そこで夫は仕事、妻は家庭と、夫婦間の役割分担が決まってしまいます。これを解決する術はあるのでしょうか。

東谷:男性が育休を取っても3日だったり5日だったりと、短いケースをよく耳にします。そうなると、「ただ休みをもらっただけ」になりかねません。だから、1日でも2日でもいいので、夫に子どもをまるまる全部任せて、女性は育児から離れる。そういうことをすると、「育児をお手伝いする」の感覚が取れるのではないかと思います。

――手伝わせるのではなく、全部任せてしまうんですね。

東谷:はい。私の知り合いに2週間育休を取った男性がいるのですが、ずっと家にいたのは2日くらいで、普通の休みと同じ気分でのんびりしていたそうです。自分がいるだけで、奥さんの気持ちが和らぐと勘違いしているのですが、彼にとってはそれが「協力」なんです。

そういう甘い考え方をする男性がとても多い。でも、まるまる任せないと、育児をしたとはなりません。

――男性側の見立ての甘さでいうと、本書の中で「女性たちが乗り気でないから女性活躍が実現しない」という声に疑問を投げています。そのアンケートを見ると、「積極的に活躍を望む女性の割合が低い」と答えた割合が、女性よりも男性の方が多かったと。

東谷:男性側から見ると、女性たちは遠慮しているように見えるようです。確かに自発的に手を上げるのが苦手な傾向がありますが、その環境が整っていないというのも一つ大きな理由です。

ビジネススクールに通っていた頃に感じたことですが、男性側の意識にも「女性の上司はちょっと...」という風潮があるのではないかと思います。これは個人的に感じたことで裏付けはないのですが、同期の男性からそういう声は聴きました。みな、頭では男女同等であるということを理解していても、そう思ってしまう人もいるわけです。この男性の拒絶意識って伝わるので、躊躇しちゃいます。男女が平等に社会で活躍するのは当然だと考える環境が欲しいですね。

(後編に続く)

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