世界的大流行となった新型コロナウィルス。緊急事態宣言下で、多くの人が先の見えない不安を抱えているだろう。
赤字や倒産危機。失業、給料の減少といった経済的問題だけでなく、目に見えないストレスも大きな負担となっている。リーマンショック、東北大震災に続く、歴史的な危機を前に、気持ちがネガティブになっている人は多いはずだ。
ただ、せっかくならばこのピンチを飛躍の糧にしたい。
『言葉の力を高めると、夢はかなう』(サンマーク出版刊)の著者、渡邊康弘氏は『何かが変わるときに、必ず「緊急性」や「最大の難関」がある』としている。
私たちは、夢や目標を掲げた時に、必ずといっていいほど「右肩上がり」の目標設定をする。
ただ、現実は予定どおりには進まず、トラブルや危機が起こる。むしろ、この危機を乗り越えることによって、チームが結束したり、パートナーとの絆が深まったり、新たな能力に目覚めたりして、人生は大きく変わっていくことが多い。
ならば、目標設定の方も理想論的な右肩上がりではなく、あらかじめ障害や難関を設計しておくべきなのだが、必ずしもそうはならない。
このことは、自己啓発の分野にもいえ、ニューヨーク大学のガブリエル・エッティンゲンの研究によれば、「引き寄せの法則はかえって人生を悪くする」という。「こうなってほしい」という自分の願望ばかりに目がいってしまい、その願望を実現するための行動を起こすエネルギーを失ってしまうからだ。
では、どうすれば、いいのだろうか?
実現度が高い目標には、あらかじめ危機や障害が組み込まれ、かつそれを乗り越える計画がある。本書では、脳科学や認知心理学、行動経済学などの最新のエビデンスに基づき、7つのシーンを想定する目標設定法を解説している。
その7つとは、E:Emergency(緊急性のシーン)、M:Mentor&Muse(メンターとミューズの登場シーン)、P:Problem&Power(障害とパワーの出現シーン)、O:Organize(新たな仲間との出会いのシーン)、W:Wanted(新たな才能に目覚めるシーン)、E:Encounter(最大の難関が出現するシーン)、R:Resonance(新世界誕生のシーン)。
これらのシーンを組み込むことで、危機や障害も想定しつつ、それでも夢や目標を実現するストーリーを作ることができるのだ。
これらの7つのシーンをより詳細にイメージするためには、こんな質問について考えてみるといい。
E:「あなたの夢が動き出す、緊急なポジティブな出来事とは?」
M:「あなたの夢をすでに達成している人に出会うとしたら、どんな人物で、どんな場所で出会っているだろうか?」
P:「新しいことにチャレンジしたとき、いつも起こる障害とは?」「障壁を乗り越えるきっかけとなる力は何か?」
O:「あなたの才能を支えるチームメンバーや仕組みとは?」
W:「チームを乗り越えて、更なる高みへと自分を成長させるために必要なこととは?」「どんな分野の圧倒的なナンバーワン、オンリーワンになっているのか?」
E:「あなたの夢で最大の難関はどんなことだろうか?」
R:「あなたが才能を開花することで、切り拓かれる世界はどのような世界だろうか?」
◇
もう一つ、本書によれば、新たな才能が目覚めるためには、最大の難関による「疑似的な死」が必要だという。もちろん、ここでいう「死」とは比喩であり、これまで積み上げてきた実績や経験が無に帰すほどの大きな挫折という意味だ。
今回の新型コロナウィルスの感染拡大や、それによる緊急事態宣言によって、やむをえず休業や自粛をして活動を抑えている人も多い。このことを、「疑似的な死」とすれば、これをきっかけに、新しい令和という時代を生き抜く、新たなコンセプトやアイデア、生き方や習慣が見いだせるかもしれない。
本書のやり方を参考に、あなたの夢や目標実現までの道のりと計画を、立ててみるのはいかがだろうか?
(新刊JP編集部)
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