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メンタルヘルスのキーワード「自己肯定感」の正体とは

  • 書名 『フェアシンキング (自己肯定感が高まる最強の思考法)』
  • 監修・編集・著者名王丸典子
  • 出版社名マキノ出版

ささいなことで落ち込んだり、物事のネガティブな側面ばかりが気になってしまったり、あるいは他者からの批判に過度に攻撃的に反応してしまったり...。

こういったことは、その人の自己肯定感と密接に関係している。
日常の様々な出来事に心が動き、敏感に何かを感じとることができるのはいいことでもある。しかし、あまりにも感じやすかったり、それによって落ち込んだり、怒りに捉われる時間があまりに多いと、人生で幸福感や充実感を感じることが難しくなってしまう。自己肯定感は、とかく他者の感情に引きずられがちな人間関係のなかで、自分を保つ「錨」になるものだ。

この自己肯定感とはどのようなもので、どうすれば高めることができるのか。
今回は『フェアシンキング (自己肯定感が高まる最強の思考法)』(マキノ出版刊)の著者で、日米両国で心理セラピストとして活動する王丸典子さんにお話をうかがった。

■自己肯定感は「流動的」なもの 安定して自信のある自分を作るために

――『フェアシンキング (自己肯定感が高まる最強の思考法)』についてお話をうかがえればと思います。「自己肯定感」という言葉はここ数年あちこちで見聞きするようになりましたが、正確な定義があいまいな気がします。まず自己肯定感とはどのようなものかについて、王丸さんのお考えをお聞きしたいです。

王丸:色々な解釈があるのですが、私は英語でいう「self - esteem」という言葉が元になっているのかなと考えています。自分のありのままの価値や能力を、卑下することもなくうぬぼれることもなく、ニュートラルな視点から受け入れるということです。

――今の自己肯定感のご説明にあった「自分のありのままの価値を認められるかどうか」というのは、生まれ育った生活環境・家庭環境によるところが大きい気がします。大人になってから自己肯定感を持つことは可能なのでしょうか。

王丸:それは100%可能です。大人になってからも、様々な経験や成長を通して自己肯定感は変化します。

それと、自己肯定感や自信というのは、いつも固定されているものではなく流動的で、たとえば仕事人としての自己肯定感と家庭人としての自己肯定感は違うということも知っておくべきだと思います。ものすごく仕事ができて、周囲から尊敬されている人も、家庭内のこととなると自信がないというケースもありますし、日によって自信がある日とない日があるというのも、実感としてわかる方が多いのではないでしょうか。

そういう自己肯定感の実体を知ったうえでやるべきことをやっていくということが大切です。今回の本でもそのための取り組みについて書いていますので、参考にしてみていただきたいですね。

――目指すべきゴールとしては、どんな時でも安定的に自己肯定感を持つというところなのでしょうか?

王丸:ゴールとしては幸福感や充実感をもって生きるということです。自己肯定感はこの二つに大いに関係していて、自己肯定感が低い人が幸福感や充実感をもって生きていくのは難しいんですね。そう考えると、自分のことを公平な目で見て、あるがままに認めてあげる姿勢を持つことは、気持ちのうえでの健康や幸福感、充実感を持つことにつながるので、とても大事なんです。

――日による自己肯定感の上がり下がりは、あっても大丈夫なものなんですか?

王丸:もちろんです。気持ちや精神状態は日々変わるものですから。だけど、自己肯定感を持てない日ばかりが続くのはちょっと問題なので、そこは少しずつ良くしていきましょう、ということですね。

――王丸さんのカウンセリングに来る方で、自己肯定感を持てないという方は、具体的にどんな悩みを抱えて来られるのでしょうか。

王丸:色々な方がいらっしゃるのですが、拠点が銀座なので仕事をバリバリされている方が多いです。たとえば、ある女性のお医者さんは仕事がものすごくできる方なのですが、子どもの頃から親に言われるままがんばって医者になったからか、人から言われたことを150%こなすことは得意なのですが、プライベートになると急に会話が苦手になってしまう、という悩みがありました。美容院で美容師さんとするようなちょっとした世間話ができなかったり、ということです。

もう一人は、こちらもお医者さんで男性の方なのですが、やはり親からがんばれと言われて、その通りにやってきた人生だったので、自分で何かを決断したことがないことに悩んでいらっしゃいました。自分が何者だかわからない、と。

――後者の方はすごく深い悩みのように思えます。

王丸:そうですね。ただ、カウンセリングに来ていただいて、一つひとつ、自分のやっていること、やってきたことを第三者と一緒に確認することで、少しずつ自己肯定感や自信といったものを安定して持てるようになったという方は多いです。もちろん、そうなった人の中には長く時間がかかった人もいれば、2回くらいのカウンセリングで精神面が安定してしまった人もいて、千差万別なのですが。

――すぐに自己肯定感を安定して持てるようになる人に共通する特徴はありますか?

王丸:性格がオープンなことでしょうか。自分で問題を認識していて、そのうえでアドバイスを受けた時に、比較的スムーズに「じゃあ、ちょっと試してみようかな」となる人は早いですね。

フェアシンキングでは、物事を俯瞰して見るのですが、それはこれまで慣れ親しんできた視点からひとまず離れてみるということでもあるので、勇気がいることではあります。それを柔軟に取り入れてみたら、パッと力が抜けて楽になったという方はいらっしゃいますね。

――王丸さんは日米でセラピストとして活躍されています。自己肯定感という点で、日本人とアメリカ人はどう違いますか?

王丸:もちろん、アメリカにも自己肯定感が低い方はいるのですが、日本の方の方が「根が深い」と感じます。

よく言われるように、アメリカは子どもを「ほめて育てる」ところがあるんです。もちろん、日本でいうところの「毒親」のような人もいますし、虐待する親もいるのですが、たとえ家庭環境が悪かったとしても、学校に行けば先生がほめてくれますから、生活のすべての場所で自分を認めてもらえないということは少ないんです。

じゃあ日本はどうかといいますと、私のように昭和の時代に教育を受けた世代の人間には、学校でもほめられず、家でもほめられなかったという人は結構多くて、そういう人はやはり自己肯定感を正しく持ちにくくなります。

また、日本の場合は協調が重視されたり、なにかと謙遜する文化の影響もあるでしょうね。協調が過度に重視されると、他人の顔色を見て自分の考えや行動を決めることにつながりますし、謙虚さは「自分で自分の価値を認めることは傲慢だ」という考えに結びつきやすい。

日本にもアメリカにも自己肯定感が低い人は一定数いるのですが、日本の方が割合として多く、問題が根深いと感じています。

――自己肯定感が低いということに自分で気づいていない人もいるのでしょうか?

王丸:いるとは思いますが、私のカウンセリングに来る方は、ほとんどの方が自己肯定感の低さを自覚しています。

ただ、そういう人も、私のところに来る直接の原因は「抑うつ感」だったり「不安感」だったりします。自己肯定感の低さは自覚しつつも、そうした悩みと自己肯定感がどうかかわっているかはわかっていないというケースはありますね。

――「抑うつ感」や「不安感」と自己肯定感はリンクする。

王丸:そうですね。イコールではないのですが、ある程度関係はあると考えていいと思います。やはり自分を信じられるようになれば気持ちは安定しますから、先行きの不安にしても、「何とかなるかな」という方向に考えが向くようになるので。

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(新刊JP編集部)

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