働き盛りの30代から40代。仕事と家庭のバランスを上手く保ちつつ毎日精を出して過ごしている中で突如問題になるのが「親の介護」です。
会社を定年退職した後、体を動かす機会がなくなったことで筋力が衰え、転倒して骨折。そのまま寝たきり生活に...という話を聞くと、子どもの立場としては「もう少し運動してほしい」と思う人も少なくないでしょう。ただ、「もうちょっと運動したほうがいいよ」とアドバイスしても、「そうだよね」と言われたままはぐらかされて終わりということも。
そんな、「親にちょっとでもいいから運動してほしい」問題と向き合う子どもに親と一緒に読んでほしい一冊が『寝たきり老後がイヤなら 毎日とにかく歩きなさい!』(すばる舎刊)です。
本書は「健康のために毎日歩こう!」をテーマに、リハビリテーション科医の安保雅博氏と理学療法士の中山恭秀氏が、老後を毎日元気で過ごすための歩き方を指南。高齢者はもちろんのこと、普段よく歩いている働き盛り世代も使える、筋肉を鍛える歩き方や筋トレが紹介されています。
ここでは本書から筋肉が強くなる歩き方をご紹介しましょう。
「大事なのは歩数ではなく、歩きの内容」だと述べるのは理学療法士の中山氏。よく「1日1万歩」という数字が出されますが、これはあくまで指標のひとつ。「1万歩も歩かなくても、十分運動効果はある」と指摘します。
大事なのは歩数ではなく「歩き」の質です。そのポイントは4つあると中山氏。
(1)歩幅を1cm伸ばす
(2)かかとからの接地
(3)足が離れるときにつま先で体を押す
(4)後ろに少し大きく手を振る
本書p.81より
(1)の「歩幅を1cm伸ばす」。これは歩幅を広げると、てこの原理のように股関節を軸に足を降り出す力や支える体幹を安定させる機能がより要求されるため、ちょこまか歩くよりも下肢の筋力強化の効果が高くなるというもの。
(2)の「かかとからの接地」は、踏み出した足をかかとから接地することで、円滑に重心を前方に移動させるための必要な筋肉の収縮を促し、エネルギー効率の良い歩行を実現させます。これは(3)の「つま先で体を押す」とセットで行いましょう。
最後の「後ろに少し大きく手を振る」は、低下しがちな柔軟性への対策です。
この歩き方を実際にやってみると意外と疲れますが、それだけ体に負荷がかかっている証拠。15分ほど実践するだけでも大きな運動となると中山氏は言います。
筋力や心肺能力を上げるならば、普段の歩行に「階段」をうまく取り入れてみてはいかがでしょうか。
階段を昇っていると心臓や肺へ負荷がかかり、下っていると下肢の筋への負荷がかかります。つまり、昇り階段は心肺機能を高め、下り階段は下肢の筋肉の強化につながるのです。
特に下りの階段は、ゆっくりひざを曲げながら降りると効果大。なめらかに(足を)降ろそうと意識することで、ひざの筋肉に遠心性の負荷がかかります。また、公園の階段などは少し低めになっていることが多いので、そういった低い段差から始めてみてください。
ただ、心臓にリスクがあったり、ひざに痛みを持っている人は、歩行に階段を含めることはおすすめしないと中山氏。十分に気を付けてください。
他にも本書には、関節の可動域を広げるストレッチや、立ち座りの主動作筋を鍛えるための運動など、家の中でできるエクササイズも紹介されています。
ただ、やはり「ストレッチや運動を意識して実践する」というのは習慣付けするまでが大変。まずは、普段の買い物や外出、散歩ついでに意識して行える歩き方を親子で身に付けてみてはいかがでしょうか。
(新刊JP編集部)
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