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離職者の多い介護業界で「社員定着率96%」 社員が辞めない会社のつくり方とは?

  • 書名 小池 修
  • 監修・編集・著者名小池 修
  • 出版社名ぱる出版
  • 定価1728円(税込)
  • ISBN9784827211092

会社で最も重要なリソースは何か。それは、設備でもお金でもなく「人」だろう。
比較的規模の小さな会社ともなれば、ギリギリの人手で現場を回していて、一人でも辞められたら厳しいという環境も珍しくはない。

特に人離れが激しい業界といえば介護職だ。公益財団法人「介護労働安定センター」の調査によれば、2015年10月からの1年間で介護職員の退職者は全国で16.7%。この数字は他の業界と比べても高い水準だ。

そんな介護業界において、驚くべき社員定着率を誇る会社がある。埼玉県さいたま市で介護事業を行うリハプライム株式会社だ。同社の社員定着率は年々良化しており、2017年の社員定着率は96%になっている。

どうすれば社員が辞めない会社をつくることができるのか。
その方法を明かしているのが、同社代表取締役の小池修氏が上梓した『日本一社員が辞めない会社』(小池修著、ぱる出版刊)だ。
本書は、退職者が後を絶たないことに頭を悩ませる社長やリーダー、アルバイトやパートが定着しない店舗経営者にとって学ぶべきことが多い一冊となっている。

■社員の「待遇改善」を後回しにしてはいけない

著者は、社員が辞めないための大前提として、まずは社員の待遇改善が必須であると述べる。
「有給休暇が取れない」「給料が安すぎる」といった待遇の悪さは社員にとって大きなネックだが、多くの経営者は「社員の待遇改善は会社が儲かってから」と考えてしまう。

しかし、会社が儲かるためには、社員がいなければ話にならない。だからこそ、社員の待遇改善は真っ先にすべきことなのである。

ギリギリの人員や売上の中、休暇を取らせてあげることや昇給の要望に応えていくことは、現実にはなかなか難しい問題かもしれない。しかし、給料の面でいえば、仕事の成果の一部をインセンティブ制にするなどして昇給に応えていくことも可能だと著者は言う。

ただし、待遇改善はあくまで前提条件。これだけで社員の離職を防ぐのに十分とは言えない。

社員が辞めないために絶対に必要なのは、「経営理念」を明確にし、社員と共有することだ。
本書では「理念」を軸にした社員が辞めない会社づくりの「4つのステップ」が紹介されている。どのようなものか見ていこう。

■「経営理念」は社長室の額縁に飾るものではない

著者は経営理念を「"どんな会社を創りたいのか?"を言葉にしたもの」だと定義している。社員が社長やリーダーの顔色を見るのではなく、その「理念」、その「想い」から自己判断することが許されれば、おいそれと会社を辞めてしまうことはないはずだ。
問題は、いかにその「理念」を社員に伝え、共有し、行動に変えていくかということだ。そのためのステップが次の4つだ。

1.会社の「理念」を確立する(会社の「目的」の共有)
2.リーダーが理念を「体現」する
3.社員の味方となり「信頼」関係を構築する
4.社員の「(やる気)支援」をする

まずは「理念」の確立だ。どんな会社にも「経営理念」はあるだろう。しかし、それは「社長室の額縁に収まったお飾り」になっていたり、「朝礼で復唱するだけの形骸化したもの」になっていたりはしないだろうか?

経営理念とは、この会社が「存在する目的」であり、「譲れないフィロソフィー」であるから、社員に伝わっていなければ、社員自身が「働く目的」を持てない状態に陥ってしまう。それはモチベーションの低下につながるし、社員はリーダーの顔色伺い、指示待ちにならざるを得ず、反発を招く危険もある。

したがって、経営理念は言語化されて、社員に伝わることが何より重要だ。
著者が社長を務めるリハプライム株式会社の経営理念は「敬護」というものだ。
これは著者による造語で「人生の大先輩である高齢者の方々を、介助して護るのではなく、敬って護る」という意味が込められている。

こうしたわかりやすく言語化された経営理念があれば、社員の働く目的もブレず、モチベーションは維持されていくというわけだ。

■理念の「体現」はリーダーが率先して行うもの

経営理念がお飾りになってしまっている会社では、リーダー自らが理念に反したことをしていることが多いです。そうなると社員はリーダーに不信感を抱き、職場を去ってしまう。

したがって、経営理念の浸透には、リーダー自らが率先して「体現」することが不可欠だ。

たとえば、著者は、開業してすぐ、ある歩行困難なシニアの歩行をサポートする際、「おいっちにぃ、おいっちにぃ」という掛け声を無意識に出してしまったという。しかし、それは高齢者を敬う気持ちに欠けており、「敬護」の精神に反する言葉だと気付き、以後、改めたそうだ。
こうした社長やリーダーによる意識的な理念の「体現」によって社員に「理念」を浸透させていく。また、このように言行一致で理念を「体現」していくことや、様々な手法で「信頼」関係を普段から創っていくことで社長やリーダーの言葉と指示が伝わりやすくなる。

また、社員のやる気「支援」も、社員が辞めない会社づくりにおいて大切なポイントだ。
著者の会社では、社員と社長の個別面談が定期的に行われており、そこで社員の要望や夢を聞き、今の会社でどのようにそれらを実現していくかを、膝を詰めて話し合うという。

「理念」を持って社員と接することを「綺麗事」「面倒だ」と思うリーダーや経営者もいるかもしれない。だが、社員が定着しない、辞める人が後を絶たないという会社は、まさにそんなリーダーの思いが「退職」というカタチに表れていると言えるだろう。本書を読めば、リーダーや経営者が忘れがちな「理念」の本当の意味と、その効力を再確認できるだろう。

(新刊JP編集部/大村佑介)

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