■中小企業でも大企業に勝てる「新たな顧客獲得術」
中小企業の営業マンの大きな課題のひとつ。それは「見込み客の確保」だ。
大企業なら、見込み客の確保を担えるしっかりと機能したマーケティング部門があり、営業マンはセールストークを行うだけでいい。
だが、多くの中小企業には、そもそもマーケティング部門がないというのが実情であり、営業部門が自力で「見込み客の確保」をしないといけない。
また、大企業なら潤沢な資金でTVや雑誌などのマスメディアに広告を打つことができるが、中小企業にそんな体力はない。
「どうすれば売り込みができる営業先を見つけられるか」「見込み客をどこでつかまえればいいのか」と、日々、苦心している中小企業や営業マンは少なくないだろう。
中小企業が「見込み客確保」のためにとる代表的な手段に「チラシ」がある。だが、その反応率はかなり低い。じつは、チラシの反応率は、わずか「0.01%」しかないのだ。
1万枚のチラシを配って、やっと1件反応があるかないか。しかも、その1件もあくまで問い合わせの件数なので、成約に至るかは別の話だ。
古典的な「足で稼ぐ」という手段も人材が十分な大企業ならいざ知らず、中小企業の限られた人員数では効果が薄い。
WEBサイトで効果が出るのも、モニタリングがきちんとできる大企業だからだ。中小企業のWEBサイトは「たまに更新する看板状態」になっていることが珍しくない。
中小企業には、中小企業なりの戦い方がある。
それが「展示会を活用した営業」だ。
そんな大企業にも負けない見込み客の確保ができ、受注・成約まで持ち込める「展示会営業術」のやり方を教えてくれる一冊が、『飛び込みなしで「新規顧客」がドンドン押し寄せる「展示会営業」術』(清永健一著、 菅谷信一監修、ごま書房新社刊)だ。
著者は、「展示会に出展する企業に出展コストの33倍売るノウハウを伝える日本唯一の展示会営業コンサルタント」として活躍し、中小企業への売り上げサポート実績は8年間で1195社を超えるという。
「展示会営業」とは、どんな営業術なのか?
■普通の営業では得られない「展示会」ならではのメリット
東京ビッグサイト、幕張メッセ、インテックス大阪、ポートメッセ名古屋などの会場で商品やサービスや情報を宣伝する催し事「展示会」。
大規模な展示会だけを数えても、その開催回数は全国各地で年間約700回もある。ほぼ毎日どこかで展示会は行われており、来場者は年間1400万人にも及ぶ。
中小企業にとって、この展示会は「見込み客の確保」の格好の場であり、売上アップの起爆剤となるのだという。
では、「展示会」の何が良いのか。そのメリットは次のようなものだ。
1.体感させながら、積極的に自社商品の価値を伝えることができる。
2.事前集客に必要以上の労力を割かなくていい。
3.展示会来場者は、特定のテーマに平均以上の関心を持っている。
4.決裁権のある人間と接点をつくることができる。
まず、一つ目のメリットは、非日常的な空間に身を置くことで、来場者に「感動・啓発・触発」が頻繁に起こることだという。
しかも、展示会なら、実際の商品を見てもらったり触ってもらったりしながら、ダイレクトに商品価値や自社の理念、情熱を伝えることができるのだ。
二つ目は、集客を自分たちだけの力でしなくても良い点だ。
展示会には主催者や大企業が集めてくれる来場者も多い。もちろん自社でも集客はしたほうがいいが、そうした沢山の来場者をゲットできる可能性が高いことも魅力だ。
三つ目は、見込み客の関心の高さである。
そもそも貴重な時間を割いて、わざわざ遠くまで足を運んでくる来場者は、開催されている展示会のテーマに強い関心がある。
つまり、最初から商品やサービスを求めていない人を相手にするという、無駄打ちのリスクを回避できるわけだ。
四つ目は、特別な空間だからこそのメリットだ。
普通に営業をしていたのでは、決裁権を持つ人と会うのはハードルが高い。しかし、展示会なら、決裁権を持つキーマンと直接話して、その意向を聞くことができる。言ってみれば、城攻めをするのにいきなり本丸に乗り込めるようなものだ。
さらに、最大のポイントは、「売る営業」ではなく「教える営業」という形で、顧客との関係を構築できることだという。
中小企業の営業は、「お客さん側が上の立場で、自分たちは頭を下げて受注にこぎつける」というのが普通だろう。
しかし、展示会には特定のテーマに高い関心を持っている人が、情報収集に来ている。つまり、「こんなことで困っているから教えてほしい」「こんな課題を解決できる商品やサービスがあったら教えてほしい」という姿勢でやって来る。
そこで的確な訴求ができれば、信頼関係以上の関係性が生まれ、継続的、安定的な売上アップが期待できるのだ。
■どうすれば「展示会」で来場者の心をつかめるか
実際に、展示会でブースをつくるときには、特に肝心なポイントがあるという。
突然だが、「展示会来場者の目線はブースの○○に行く」。
この「○○」に入る言葉は何だろうか?
正解は「上部」だ。
これは、実際に展示会でブースをつくるときには、特に肝心なポイントだ。
来場者のほとんどは、会場内を歩きながら「ここは何のブースだろう?」とアンテナを張っている。しかも、来場者はわずか3秒でそのブースが自分の役に立つかどうかを判断するのだという。
そこで、ブース上部に「株式会社△△産業」と素っ気なく社名だけが書かれていたらどうだろうか?
来場者には、そこがどんな商品やサービスを扱っている会社なのかわからない。それでは、みすみすチャンスを棒に振るようなものだ。
見込み客確保のためには、ブース上部に「ブースキャッチコピー(自社の売り文句)」を掲載するのが、展示会を成功に導く最重要課題なのだと著者は述べる。
この「ブースキャッチコピー」には、3つのポイントがある。
1.デパート形式ではなく、専門店形式であること
2.メリットがすぐにわかること
3.定量的に効果が見えること
たとえば、「組織を活性化させる効果がある人事制度構築」を展示会のブースで訴求したいとする。これを「ワクワクする組織活性化の仕組み」といったコピーにしても、具体的なことがわからないので、お客さんの心はつかみにくい。
しかし、3つのポイントを盛り込み「累計100社超への導入実績! 離職率を13%減にする、従業員50名未満の企業経営者のための仕組み」と変えたらどうだろうか。
最初のコピーより具体性が増し、興味を惹きやすくなっている。
本書では、他にも展示会を成功させるためのポイントや方法が、かなり踏み込んだところまで具体的に紹介されている。
■展示会営業術は、展示会に縁のない企業にも役に立つ!
本書は、「興味喚起」→「メリット提示」→「行動要請」という顧客獲得の一連の流れを一気通貫で網羅している。
本書を読めば、新規顧客獲得はちょっとしたポイントに気をつけるだけで成果が大きく変わることに気づくだろう。
展示会営業術のエッセンスは、展示会を活用しない通常の営業活動にも大きく活用できるように思う。その意味から、展示会に縁がない企業の経営者やスタッフ、営業マンも、自社の営業活動に、本書の展示会営業術のポイントを取り入れてみる価値があるかもしれない。
(ライター:大村 佑介)
『飛び込みなしで「新規顧客」がドンドン押し寄せる「展示会営業」術』(ごま書房新社刊)