日本だけでなく、海外でも評価される日本人作家といえば、まず思い当たるのは村上春樹だろう。
では、その他はどうだろうか。谷崎潤一郎や大江健三郎といった「大御所」や「昔の文豪」をのぞくと、なかなか名前が出てこない、という人が多いかもしれない。しかし、安心してほしい。日本文学は海外でも一定の評価を受けている。
アメリカ最大の書店チェーン、バーンズアンドノーブルは、自社のサイトで「8 Great Japanese Books in Translation That Aren’t by Haruki Murakami(村上春樹によるものではない日本のすごい本8冊)」と題した記事で、注目すべき日本の文学小説に触れている。
■「タランティーノ映画が好きなら…」と紹介される桐野夏生作品
「ブレイキング・バッド(アメリカの人気ドラマシリーズ)やクエンティン・タランティーノのファンには訴えかけるものがあるだろう」として、まず紹介されているのが、桐野夏生の『OUT』(1997年)だ。
日常的にDVを受けていた妻が、ふとした諍いから夫を殺害。その死体の処理に協力したパート仲間の主婦たちが、日常から逸脱していく様子を描き、米エドガー賞の長編部門にエントリーされた。
日本でも80万部を超える大ベストセラーとなり、映画化、ドラマ化もされている。
■宮部みゆきの代表作『All She Was Worth』とは
英語版のタイトルが『All She Was Worth』と聞いて、元の本がわかるだろうか?
正解は、宮部みゆき『火車』(1992年)である。
ある女性の失踪事件の真相を探るミステリーであると同時に、カード社会の暗部に光を当てた社会派小説の一面も持ったこの作品は、宮部みゆきの代表作として、今でも読み継がれている。
英訳版は「巧みに書かれたサスペンスであり、日本の消費社会の暗部をめぐる深く憂うつな旅」と紹介され、英語圏の読者からの評価も高い。
■中村文則、川上弘美、東野圭吾…世界で注目される日本人作家たち
東京の街で富裕層相手にスリを働く男を主人公に据えたアンチヒーロー小説、『掏摸』(2009年)は、そのまま『The Thief』というタイトルで英訳されている。
「善と悪」「運命」といった哲学的な主題を巧みにストーリーに織り込むことに定評がある中村作品は、英語圏の読者にも強い印象を与えたよう。バーンズアンドノーブルのオンラインショップに寄せられたレビューも好意的なものが多い。
この他にも、吉本ばなな『キッチン』や、川上弘美『真鶴』、大江健三郎『取り替え子』、東野圭吾『真夏の方程式』、石崎洋司『チェーン・メール ずっとあなたとつながっていたい』が、「日本人作家によるすごい本」として記事内で紹介されている。
また、この記事に寄せられたコメントでも、横山秀夫『64』、増田みず子『独身病』などの日本人作家の作品を推す声もあった。
一度は日本語で味わった作家の本も、英訳版を読んでみるとまた違った楽しみがあるもの。 Amazonなどで日本人作家の名前をローマ字入力して検索すると、英訳された洋書版がヒットするので、これを機に英語での読書にチャレンジしてみてはいかがだろうか。
(新刊JP編集部)
・8 Great Japanese Books in Translation That Aren’t by Haruki Murakami
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