最近、「空き家問題」という言葉が注目を集めつつあります。
この問題がクローズアップされるようになった背景には、人口減少や経済の東京一極集中など、様々なものがありますが、『空き家は2018年までに手放しなさい』(沖有人/著、SBクリエイティブ/刊)によると、2015年5月より「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されたこともその大きな一因のようです。
この法律により市区町村の権限が大幅に強化され、「倒壊の恐れがある」あるいは「衛生上著しく有害となる恐れがある」空き家の持ち主に対して、撤去や修繕を命令できるようになりました。さらには税制面の修正も行なわれ、特定空き家に認定されると、土地の固定資産税が最大6倍にも跳ね上がる可能性もあるといいます。
今、日本社会では「空き家を放置しておく」ということが難しくなりつつあるのです。
実際、「面倒なことにならないうちに、さっさと空き家を売ってしまおう」と考える人が出始めており、今後もその傾向は強まっていくことが予想されます。その結果、中古不動産市場が「売り手」であふれると、自分の不動産をいい条件で売るのはどんどん難しくなっていくでしょう。
そんな状況のなか、「空き家は2018年までに売るのがベスト」と語るのは、本書の著者である沖さん。2020年に東京オリンピックが開催されること、2018年ごろまでは金融緩和政策が続く可能性が高いことなどから、このタイミングが「売りどき」だとしています。では、空き家を少しでも好条件で売るためには何に気をつければよいのでしょうか。
■ポイントは、どんな不動産会社に頼むかではなく、どんな契約を結ぶか
いざ「空き家を売ろう」となったとき、最初にすべきは、仲介を頼む不動産会社を決めることです。不動産売却の経験がない人は「どういう特徴がある不動産会社に頼めばいいのだろう?」と悩むかもしれませんが、この点については特に注意する必要はなく「地元に強い不動産会社であればどこでもOK」だといいます。
ただ、肝になるのは、不動産会社との契約の結び方。以下のとおり、契約タイプには、三つの選択肢があります。
1.一般媒介契約
複数の不動産会社に仲介を依頼でき、かつ、自分でも買い手を探せる契約
2.専任媒介契約
特定の不動産会社1社のみに仲介を任せつつ、自分でも買い手を探せる契約
3.専属専任媒介契約
自分が買い手を探すことを放棄して、不動産会社1社のみに仲介を任せる契約
不動産会社は基本的に「専任媒介」か「専属専任媒介」をすすめてくることが多いようですが、どの契約タイプを選ぶのかは、自分が売ろうとしている不動産の性質によって決めるべきです。
たとえば、物件の個性が強く交渉の手間がかかる空き家を売ろうとするのなら、しっかり力を入れて買い主を探してもらうために「専属専任媒介契約」を、そうではない、一般的な物件を売りたいのなら、踏むべき手順は決まっているため「一般媒介契約」が適しています。
また、どのような契約の結び方をするにせよ、共通して気をつけたいのが契約期間です。媒介契約は、1回の契約で最長3ヶ月と法律で決まっていますが、1ヶ月契約にしておくのがポイント。不動産業界では、売り出されてから3ヶ月以上経っても売れていない物件は「傷もの」とみなされて扱いが低くなってしまうのです。したがって、まずは1ヶ月仲介を頼んでみて、結果が芳しくなければ他の不動産会社に乗り換えるための余地を残しておくのがいいでしょう。
ここまで空き家を「売る」際に気をつけるべきポイントを「媒介契約」の観点から紹介してきました。本書には、それ以外にも「売る」ときに知っておくべき情報が分かりやすく紹介されています。さらに、沖さんは「家や土地に思い入れがあるなら、『売る』以外の選択肢も検討したほうがいい」とも述べており、本書では「貸す」「住む」といった選択肢を検討する際のポイントも解説しています。
人口減少はこれからますます加速し、「空き家」をどうするか、というのは多くの人や家族にとっての課題となっていくでしょう。いざという時に慌てないためにも、今必要な知識を得ておいて損はないはずです。
(新刊JP編集部)
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