『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』などで知られるアニメーション監督、細田守は今や世界でもっとも注目されているアニメーション監督と言っても過言はないだろう。細田作品は「ディズニーやピクサー作品とは一線を画すアニメーション映画だ」とも言われ、その独特の演出方法から、宮崎駿に続くアニメ映画監督として期待される逸材であることは間違いない。
そんな細田監督の最新作『バケモノの子』が今年2015年7月11日に公開される。前作『おおかみこどもの雨と雪』では、「母親」を主人公に「親と子とは」というテーマに迫った細田監督だったが、今回選んだテーマは「父と子」。昔ながらの家族の形がなくなりつつあり、子供が真っ直ぐに信じられるものがどんどん少なくなってきているように感じる昨今。細田監督がこの作品で問いかけようとしている「新しい家族のあり方」は、いまの日本の課題でもあり、希望とも言えるのではないだろうか。
なぜ、映画監督「細田守」の作品がいまの社会で必要とされているのか?
アニメ評論の草分け的存在である著者の氷川竜介は、著書『細田守の世界 希望と奇跡を生むアニメーション』(祥伝社刊)で、細田監督の唯一無二の存在感、人を惹きこんで離さない魅力をこう解説している。
「細田監督は、実に不思議なクリエイターです。日本が連綿と築きあげてきた手描きアニメーション文化の伝統のもと、大衆的でパブリックな娯楽作品をめざしています。なのに作品は必ず新たな輝きを宿していて、時代ごとの特質を映し出す。」
「励まされ、背中を押された感じさえ受け取れる。絶望しかかっていた人も、もう一度、人間と世界を好きになって、希望を取りもどせるかもしれない」
映画を見た後に誰かに会いたくなる、空を見上げたくなる、この世界を肯定したくなる。そんな「希望」と「奇跡」が細田作品を見た後、観客それぞれの中で起こるというのだ。
暗いニュースや未来への不安が蔓延しているこの世の中で、明るい未来を見ることは簡単ではない。しかし、細田作品の中に潜む希望の種が、心の中で何かを変えてくれるとしたら、そこで起こる奇跡は社会を、世界を照らしてくれるのかもしれない。
本書は「細田守」という監督の描く世界に興味がある人のための「細田守入門」ともよべる一冊であるとともに、アニメーションの無限の可能性を感じられるアニメ文化論ともいえるであろう。
アニメーションという「芸術」に触れることが、ひとつの「希望」となり、「奇跡」を生み出す。それを教えてくれる一冊である。
(新刊JP編集部)
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