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「キッチン南海」「さぼうる」…神保町の名店が次々に登場するミステリー

 小説家・堂場瞬一氏の100冊の小説を並べる出版社11社合同カウントダウンプロジェクト「堂場瞬一の100冊」。その93冊目として刊行されるのが『夏の雷音』(堂場瞬一/著、小学館/刊)だ。
 本書の一番の特徴は、東京・神保町を舞台に描いた“神保町ミステリー”だということだろう。

 主人公は、神保町にある明央大学法学部准教授の吾妻幹。生まれも育ちも神保町だ。ある日、キッチン南海でカツカレーを食べていた吾妻は、高校の後輩の安田に声を掛けられ、相談を持ちかけられる。
 安田が店主を務める楽器店で、一番高いギターが盗難にあったのだ。それは、安田がアメリカでのオークションで落札したギブソン社の通称「58」だった。その落札価格はなんと1億2000万円。

 地元・神保町でのネットワークを駆使し、「58」の行方を追う吾妻だったが、その最中、安田が何者かに殺されてしまう。教え子の女子大生・杏子を助手にして、億単位の値がつくヴィンテージギター業界の内情やオークションの世界のからくりを調べ、神保町の街を歩き回り、事件の謎を追っていく。

 本書の舞台となる神保町は本の街として有名だが、それだけではない。神保町界隈は音楽、スポーツ用品店の街でもある。靖国通りの駿河台下交差点を基点にして、西側が書店街、東側がスポーツ用品店の街、そしてJR御茶ノ水駅へ上っていく道路の両側が楽器屋街となる。さらに、神保町は食の街でもある。喫茶店やカレー屋などの名店が数多くあり、実在の名店も作中に登場する。
 例えば、冒頭で吾妻がカレーを食べるシーンがこのように描かれている。

 「神保町のソウルフードは、「キッチン南海」のカツカレーである。
 薄く揚がったカツは、千切りキャベツとライスに立てかけられるように置かれる。皿の面積の三分の二を覆うのは、独特のどす黒いカレーだ。いかにも香辛料が効いて辛そうなのだが、実際にはそれほどでもない。
 七百円でこれほど満足できる食事は、今の日本にはこれ以外ないだろう。」(P3より引用)

 吾妻が「共栄堂」でポークカレーを食べた後、喫茶店「さぼうる」でイチゴの生ジュースを飲むというシーンもある。他にも「ギャラリー珈琲店古瀬戸」、天ぷら屋の「いも屋」、中国料理の「揚子江菜館」など、神保町グルメが満載なのだ。

 ミステリーとしてだけではなく、神保町の街並みや食も楽しむことができる本書。実際に神保町の街を散策したくなる一冊だ。
(新刊JP編集部)

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