資料を読んだり、読書の概要を掴んだりと、忙しいなかで情報をインプットしないといけない場面は多々あります。こんな時、「速読ができればなあ……」と思ったことがある人は多いでしょう。
ところで、「速読」というと、選ばれし天才だけが身につけられる能力のようなイメージがありますが、実はそんなことはないようです。
『速読日本一が教える 1日10分速読トレーニング』(日本能率協会マネジメントセンター/刊)によると、普段の2倍~3倍の速さで読むということであれば、トレーニング次第で誰でもできるのだとか。
今回は、この本の著者である角田和将さんにお話をうかがい、速読を身につける際のポイントを教えていただきました。
――『速読日本一が教える 1日10分速読トレーニング』についてお話をうかがえればと思います。まず、速読というのは特別な才能が必要だというイメージがあるのですが、実際のところは誰にでもできるものなのでしょうか。
角田:「本をぱらぱらめくっただけで全ての内容を理解する」というようなレベルだと特別な才能がないとできないのかもしれません。ただ、「今よりも2倍、3倍くらいのスピードで読めるようになる」くらいのことであれば、基本的には誰でもできるものです。
――普通の人がトレーニングで到達できる限界というのはどのあたりのでしょうか。
角田:本当に限界まで求めれば、ページをパラパラめくるだけで内容を理解できる人もいると思います。
これまで見たなかで一番速い人は1ページにつき0.5秒くらいで読んでいましたね。僕も一番速かった時期はそのくらいで読めていたと思います。
――その速さで読んで、内容の何割くらい理解できるのでしょうか?
角田:何割かというと難しいのですが、後で概要を説明できるくらいには理解できます。
でも、これって特別なことではないんです。「1ページ0.5秒」は無理でも「1行0.5秒」だったらトレーニングでできるようになります。これでも、一般的な読む速度の2倍以上なんです。今まで本を一冊読むのに2時間から3時間かかっていたものを1時間ほどで読めるようになるというだけで、生活はずいぶん変わるはずなのですが、みなさん「速読」への期待が非常に高くて、それこそ「速読を身につければ、ぱらぱらめくっただけで内容が全部わかる」と考えがちなんですよ。それもあって、速読は「まがいもの」と言われることが多くて「信じるか信じないか」というものになってしまっています。
でも、結局のところ速読はスキルですから、ちゃんとした考え方に基づいてトレーニングをしていけば誰でもできるものなんです。
――社会人になっても、活字がスムーズに読めない人は多くいます。こういった人が速く正確に文章を読むために、最初にすべきことはどんなことですか?
角田:本の中で書いているように、文章を「読むのではなく、見て内容を理解する」ということがポイントではないでしょうか。活字を追うのではなくページをビジュアルで捉える意識が大事なので、まずは「読むという意識をなくす」ことですね。
活字嫌いでこれまであまり文章を読んでこなかった人というのは、変な癖がついていないので、コツさえ掴めばマスターは速いと思います。
――角田さんも、かつては活字嫌いだったそうですね。
角田:そうですね。活字を一文字ずつ追うような読み方をしていると、それこそ3行とか5行くらいで眠くなってしまうような感じでした。
社会人になってから、必要があって速読を習いに行ったのですが、そこで「活字を一文字ずつ追うのではなく、7文字~10文字単位のブロックとして活字を捉える」「内容が頭に入ったかどうかは置いておき、文字を認識できたら次のブロックに進む」という読み方を指導されたんです。それだと、文章を読む感覚が、活字を追っていた時とは変わるので、眠くなることはなくなりました。
この本で紹介している速読の方法も、この読み方に基づいています。
――本書では、文章を読むのが遅くなる理由として「なぞり読み」を挙げられていますが、他にも読むのが遅くなってしまう悪癖がありましたら教えていただければと思います。
角田:頭の中で音読しながら読むことは、速く読むためには悪癖だといえます。活字を見ると反射的に頭の中で音読してしまう人は結構いるのですが、これでは中々スピードは上がりません。
というのは、音読することで“音声化”している以上、「音声として聞き取れる限界」が「読むスピードの限界」になってしまうわけで、それだと割と早い段階で限界がきてしまうんです。
これに対して、ビジュアル的に文章を捉える時というのは、頭の中で音声化されません。たとえば、レストランのメニュー表を読む時というのは、一つひとつのメニューの名前を頭の中で音声化することはありませんよね。ほとんどの人は、メニュー名をひとかたまりとして見てイメージを思い浮かべるはずです。文章を速く読むためにはこういう認識の仕方に変えていかないといけません。
――ほとんどの人は小学校の国語の授業で音読を経験してきていますから、その時の読み方が癖として残ってしまっているのかもしれませんね。
角田:幼少期はそういう教育は大事で、言葉が持つ感覚的なものを朗読や音読で学んでいくのはいいことだと思っています。
それに加えて、中学生や高校生になったら、文章をビジュアルとして見て理解するという読み方も知っておいたほうがいい。本当は両方できるのが理想なのですが、今の学校教育には「ビジュアルとして理解する読み方」を教わるポイントがないんです。僕自身、小学校でやった朗読が苦手で活字嫌いになったところがあるので、そうじゃない読み方もあるんだよということがわかれば救われる人もいるんじゃないかと思うんですけどね。
(後編につづく)
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