グローバル化によって世界の経済が一つに繋がっている今、地球のどこに潜んでいるどんなリスクが、自国の経済に牙を剥くかはなかなか把握するのが難しいところだろう。
“ハイパーメディアクリエイター”として知られる高城剛氏は、長年にわたって世界を渡り歩き、経済危機に陥った国や経済破綻した国を取材して、その原因や経緯を探ってきた。その経験を一冊にまとめたのが『世界はすでに破綻しているのか?』(集英社/刊)である。
経済危機はなぜ起ったのか?
今回は2010年に起こった「ギリシャ危機」の事例を紹介しよう。
■粉飾によってEUに加盟した国
実はギリシャは、1830年に独立して以来、国家の歴史の半分以上がデフォルトに近い状態にあるという、経済的に問題がある国だ。
今でこそEUの一員となっているが、2001年のユーロ導入時も、財政赤字の基準を満たせず、あろうことか財政状態を粉飾してEUに加盟するという荒ワザを使っている。
ギリシャの財政状態の悪さは、端的に政治の腐敗によるところが大きい。多くの資格や許認可が政治家に委ねられているために賄賂や汚職、脱税が横行し、徴税システムがまともに機能していなかった。加えて縁故採用によって公務員があまりに増えすぎたこと、利権絡みの公共投資を濫発したことなどによって、財政赤字はどんどん拡大していった。
■経済統計の不備発覚。ずさんなギリシャ経済
しかし、巨額の財政赤字ということであれば、日本もアメリカも同様。両国ともに国債を発行することで対処しているわけだが、ギリシャの場合はこの方法をとることが難しかったようだ。
ギリシャ財政の悪評は諸外国に轟いており、格付け機関はこぞってギリシャ国債の格付けを引き下げたのだ。さらに悪いことに、日本とは違いギリシャ国債の7割以上は海外投資家が所有していたため、2009年のドバイ・ショックで世界的な株価の急落が起こった後、2010年にギリシャの経済統計に不備があったことが発覚すると、つぎつぎとそれらは売られ、暴落に歯止めがかからない状態になってしまったのである。
■国債暴落は止まらず……
あわてたギリシャ政府は、増税は年金削減、公務員の給与カットなど、財政健全化の計画を打ち出したが、もう遅かった。
無能な政府の尻拭いをさせられることになったギリシャ国民はこれらの政策に激しく反発し、首都のアテネでは連日ストライキや抗議デモの嵐が吹き荒れた。公務員の給与カットに反発した清掃職員がゴミ回収をボイコットしたため、街はゴミだらけ、地下鉄も運休、美術館も閉鎖され、観光立国を目指すギリシャにさらなる大打撃を与えた。
その後の、ギリシャ政府の対応のまずさや、EUによる支援の遅れもあって、ギリシャの国債価格の下落は止まらず、実質的には経済破綻したも同然だったが、2010年4月23日、ついに政府はEUと国債通貨基金(IMF)に支援を要請、向こう3年間で総額1100億ユーロの金融支援を取りつけるなどして、表面的には国家破綻は回避された。
本書には、世界各地で起こった経済危機、経済破綻の事例が、高城氏自身の体験と取材を元につづられている。
今回取り上げたギリシャのケースは政府のずさんさが目立ったが、他の事例にはまた異なった背景と原因があり、国家と経済の奥深さを感じることができるはずだ。
(新刊JP編集部)
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