日本国内でカジノ運営を合法化するかどうかの審議が本格化している。
石原慎太郎・元東京都知事が1999年に「お台場カジノ構想」を発表して以来、何度か盛り上がりを見せたものの、法整備等の問題で実現にいたっていなかった「日本のカジノ」だが、2020年のオリンピック開催が決定したことで、国際観光産業の振興が国の重要課題となり、「経済の起爆剤」として実現に向けた機運はいつになく高まっているといっていい。
しかし、多くの日本人にとって「カジノ」は馴染みのないもので、だからこそ「治安悪化を招く」「新しいパチンコ店を増やすだけ」など反対意見も多い。これらは本当なのだろうか?
そこで今回は、海外のカジノ事情に詳しい、国際カジノ研究所所長の木曽崇氏による『日本版カジノのすべて……しくみ、経済効果からビジネス、統合型リゾートまで』(日本実業出版社/刊)から、誰もが気になっているであろう、カジノについての疑問に答えていこう。
■「カジノができると治安悪化」は本当?
カジノ誘致への反対理由として、もっとも多いのが「治安悪化への懸念」だろう。結論からいってしまえば、「カジノが治安悪化を招く」というのはまちがいだ。
カジノで有名なアメリカ・ラスベガスの犯罪発生率は、「10万人あたりの殺人件数(4.7/全米平均は4.7)」も「10万人あたりの軽犯罪件数(2727/全米平均は2908)」も、全米平均と同じか、やや下回っており、「カジノ=治安悪化」説の裏付けとはなっていない。
ディズニーワールドのあるオーランドが「10万人あたりの殺人件数(5.6)」と「10万人あたりの軽犯罪件数(3662)」も高い数値となっていることを考えると、「観光振興自体が人を呼び込むために犯罪を引き寄せやすいが、対策次第で治安悪化は防げる」といったところか。
※データは「Federal Bureau of Investigation:Crime in the United States 2011」のもの
■カジノで代表的なギャンブルは?
海外旅行などでカジノに行ったことがある人は別だが、多くの日本人は、カジノではどんなギャンブルが行われているか知らないのではないだろうか?
世界のカジノを見渡すと、一般的にプレイされているテーブルゲームは「ルーレット」「ブラックジャック」「バカラ」の3つ。
日本にカジノができた場合、これらに加えて日本に古くからある「丁半」や、スロットマシン、ビデオポーカーなども提供される可能性があるという。
■カジノに来る客はどんな人か
日本のカジノ構想は、「劇場や宿泊施設など、複合的なレジャー施設の一部としてカジノを設置する」というもの。その意味で、昔ながらの「鉄火場」ではないし、「パチンコ店の延長」とも違う。
単なるギャンブル場ではない以上、利用者は多種多様なものになるだろう。お金持ちから庶民まで、ギャンブル目的の人からそうでない人まで、さまざまな人が集まる場となるはずだ。
■カジノの営業時間は?
木曽氏によると、基本的にカジノは24時間営業。韓国などでは法令にもとづいて早朝に一度閉店するが、これはかなり珍しいケースのようだ。
もし日本にカジノができた場合は24時間営業になる可能性は高いと見ていいだろう。
本書には、カジノという施設が社会に何をもたらすのかが、その光の部分も影の部分もあますことなくつづられている。
反対派や慎重論も多いが、経済効果や地域振興という点ではカジノがもたらすメリットは計り知れない。これらを踏まえて、自分はカジノ設置に賛成なのか、反対なのか。もし設置されたらどう付き合っていくのかというのは、私たちが今から考えておくべき問題なのだ。
(新刊JP編集部)
■国際カジノ研究所所長 木曽崇氏ブログ(http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/)
関連記事
・
「パチンコはどうして合法なのか?」―『パチンコがなくなる日』POKKA吉田さんインタビュー(前編)・
“災害時でもまとまらない”パチンコ業界の未来は?―『パチンコがなくなる日』POKKA吉田さんインタビュー(後編)・
ギャンブルでも浪費でもない 破産する人の特徴・
なかなかお金が貯まらない人の特徴とは?ついに実現!?カジノにまつわる素朴な疑問