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風変わりな「戦隊モノ」がカルト的人気に

 「戦隊モノ」といえば、ヒーローたち(多くは5人組)が悪の組織を相手に、地球の平和を守るために戦うのが定番。子どもの頃、特撮を駆使した派手な戦闘シーンに胸を躍らせた記憶を持つ人は多いだろう。
 しかし、戦闘シーンがまったくなく、そもそも戦士たちにヒーローとしての自覚も誇りもないという、なんとも風変わりな「戦隊モノ」があるのをご存じだろうか。
 2014年4月から6月まで放送されていた『乾杯戦士アフターⅤ』は、テレビ埼玉やテレビ神奈川といった独立局中心の放送形態にもかかわらず、カルト的な人気を博している。

■「飲み会」と「カラオケ」ばかり。戦闘シーンはナシ
 この「戦隊モノ」。そもそもの設定からヘンだ。
 「悪の組織」と戦う「黄金戦隊トレジャーⅤ」なのだが、長年の戦いの成果によって悪が激減。最近では「悪の組織」との戦いよりも、その後の「飲み会」の方がメインになり、ちまたでは「乾杯戦士アフターV」と呼ばれるていたらく。「戦隊モノ」にあるべき戦闘は皆無で、居酒屋で酒を飲んでいるシーンと、二次会でカラオケをしているシーンしかないのである。

■正義のヒーローなのに定時になると帰宅
 そして、ヒーローである戦士たちも、すっかり平和ボケしているというか、そもそもモチベーションが低い。
 真面目に正義を志しているのはレッドだけで、「新聞配達募集にも採用されず、もうバイクに乗れる仕事ならなんでもいいと高校の先生に言ったら戦闘課への願書をわたされた」というムダにイケメンなブルー、「安定している公務員ならなんでもよかった(「アフター5」は公務員という設定)」というピンク、戦闘後のビールのために戦っているというイエロー、戦いの途中でも定時になると帰ってしまうグリーンと、ヒーローとしてのプライドも誇りもないメンバーがずらり。
 そして彼らは今日も、「居酒屋NIJYU-MARU」(実際に撮影は同チェーンの秋葉原店で行われた)に集まっては、ビールをあおるのである。

■「悪の組織」は居酒屋に……
 しかし、いくらなんでも酒を飲んでいるだけではドラマとして成立しない。彼らと対立する「悪の組織」も(一応)いるのだが、財政難と人材難で弱体化。総帥と戦闘員は「アフターⅤ」が集う居酒屋で働き、彼らの会話を立ち聞きしながらチャンスを待っている。
 「最近奴ら、必ず先にサイコロステーキを頼んでおるからな。先に作ってやったわ!!ふははは!」と高笑いする総帥だが、立ち聞きの成果がこれでは、「アフターⅤ」を倒すという悲願は果たせそうにない……。

 『乾杯戦士アフターVひみつ大百科』(乾杯戦士製作委員会/編著、扶桑社/刊)は、何とも珍妙なこの「戦隊モノ」の魅力がギュッと詰まった一冊だ。「戦隊モノ」に「大百科」はつきものだが、この「乾杯戦士」で「大百科」が出るとは、その遊び心が粋というもの。
 ヒーローたちのインタビューだけでなく、撮影エピソードや、名シーン、飲み会で出された料理、ドラマでは触れられなかったロボのすごい威力など、知る人ぞ知るこのドラマの記念碑であり、ファンなら手に入れておきたいところだ。
(新刊JP編集部)

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