仕事や家事、雑用などで私たちの毎日はどんどん過ぎていきます。
自由時間がほとんど取れず「1日がもう3時間くらい長かったらいいのにな」などと思ったことがある人は多いはず。
でも、考えてみてください。あなたには本当に自由な時間を作る余地がないのでしょうか。
『あなたの1日を3時間増やす「超整理術」』(角川学芸出版/刊)の著者、高嶋美里さんは、「1日の中に空白の時間が一人平均5時間ある」といいます。5時間とはにわかには信じがたいほどの長さですが、ちょっとした心がけひとつで、この時間を捻出できるといいます。今回は高嶋さんをお話を伺い、その秘訣をお聞きしました。
―『あなたの1日を3時間増やす「超整理術」』についてお話をうかがえればと思います。
自分も含めて社会人になるとどうしても時間がなくなっていきます。その意味でこの本を求めている人は多いのではないかと思いますが、まずは「1日を3時間増やす」整理術の基本的な考え方を教えていただけますか。
高嶋:ただ身の周りをきれいにして、気持ち良くなって終わりではなくて、整理することによって仕事などに何らかの成果を出そう、ということですね。
それには、はじめに整理をする目的をしっかり定めることが大切になります。「年収を上げる」でもいいですし、「売り上げを伸ばす」でもいいです。人それぞれ夢や目標があると思いますので、自分なりの整理をする目的を決めてから始めてほしいと思います。
―今おっしゃったように、この本ではそれぞれの目標や夢を効率的に叶えていくために、14日間にわたって時間の使い方や身の周りのもの、お金の使い方を整理していきます。この方法論を、高嶋さんはどのように作り上げていったのでしょうか。
高嶋:私の母が厳しいというか、少し変わった人で、学校の勉強を家に持ち込んではいけないと言われていたんです。宿題や予習、復習は学校で終わらせてきなさい、家で勉強してはいけません、小学校の勉強はそれで一番が取れるはずだ、ということですね。
家に帰ったら家の手伝いをすべきだという考え方だったので、家で勉強をしようとするとすごく怒られるんです。
―それは厳しいですね。
高嶋:厳しかったですよ。それでいて成績が悪いと冷ややかな目で見られて(笑)。
じゃあどうしようか、となったんですけど、学校で勉強を全部終わらせるとなると休み時間を使うしかないじゃないですか。放課後は放課後で、友達と遊ぶのもダメですぐに帰ってきなさいと言われていましたし。でも、授業の合間の休み時間で全部終わらせるってすごく大変で、実際に最初はできなかったんです。
それでまた考えたんですけど、よく授業中に先生が「何分までこの問題をやりなさい」って指示を出すことがあるじゃないですか。そういう時に早く問題を解いてしまえば時間が余るから、そこで宿題や予習をやるようになったというのが、私の整理術の原点です。
やってみると、こういう隙間時間が至るところにある事がわかって、そこを利用するようになりました。それからは学校で宿題などを終わらせることができるようになりましたし、それまでよりも成績が上がったんです。
ただ、家で勉強をしても成績が思うように伸びない子もいます。この違いは何だろうと考えた時に「時間はたくさんあればあるほど無駄にしがちになるんだ」ということに気がついたんです。そこからは、短い時間でどれだけのことができるかという事に目を向けるようになりましたね。
―そこからはずっとそのやり方で勉強を続けていたのでしょうか。
高嶋:そうですね。どうすればもっと時間を効率的に使えるかを実験するようになったんですけど、やればやるほど与えられた時間が短いほど成果が上がるっていう実験結果が出たんです。
私は大学時代に家庭教師や塾の講師のアルバイトをしていたのですが、この結果を踏まえて生徒たちに「何時間勉強しなさい」ということは言わず、逆に「10分しかやっちゃダメ」と制約を作りました。すると、全員の成績が上がって大きな成果が出ました。これでこの方法に確信を持ったんです。
―なるほど、身の周りの整理についてもこの時の経験が元になっているのですか。
高嶋:「10分しか時間がない」という状況で勉強をする時、たとえば「消しゴムがない」となるとそれを探すだけで10分過ぎてしまいます。だから、何がどこにあるかを全部あらかじめ頭の中に入れておかないといけません。身の周りの整理はこれが目的になっています。
では、どうすればいいかというと、まず身の周りの物を減らさないといけませんよね。
―本の中では「20種類」と書かれていましたね。
高嶋:全部把握しようとすると20種類が限度なんですよ。これより少ないと必要なものがなかったりしてかえって効率が悪くなりますし、これより多いと把握しきれない。20種類がベストだと思います。
―本書で紹介されている整理術を実行するにあたって、注意点がありましたら教えていただければと思います。
高嶋:こうだ、という既成概念を全部捨てることです。「これをやるのに何時間かかる」という、これまでの自分の感覚は全てまちがっているというところからスタートします。実際にそういう思い込みはほとんどまちがっているんです。
3時間必要だと思いこんでいたことが5分でできると言われたら、誰だって信じられないでしょう。でも、そんなことは珍しくもなんともないんです。3時間かかると思いこんでいるから時間を短縮できないだけで。
(後編につづく)
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