「日本はダメな国。借金だらけで、年金は破たん寸前。国民は一生懸命働いても全然楽にならない。ころころ総理大臣が変わるし、日本の政治に期待するものはなにもないから市場に介入するな! これからさらにグローバル化が進んで、いずれ国境はなくなっているのだから、一つの国の政治を重要視しても意味がない」
かなり極端に書きましたが、この中の「日本はダメな国」「国家は市場に介入するな」「これから世界の時代だから日本の中にいる理由なんてない」といったことを考えたことがある人は少なくないはずです。
しかし、私たち日本人のほとんどは、日本で生まれ、日本で育ってきました。日本という国家の庇護を受けて、成長してきました。そして海外に行けば、どこに行っても私たちは“日本人”として扱われます。そんなとき、「日本ってどうなの?」と聞かれ、「日本はダメな国」「あんな国いる意味ない」などと言うのはあまりにも悲しくないでしょうか。
『希臘(ギリシア)から来たソフィア』(さかき漣/著、三橋貴明/原案、自由社/刊)は、政治家一門4代目という超エリートながら、そんな思想を持って選挙に出て大敗を喫し、失意に沈む青年・橘航太郎と、財政難に悩まされるギリシアから航太郎と同じような思想を持って日本に留学してきた美女・ソフィアが出会い、大喧嘩を繰り広げながら、日本とギリシアの比較を通して国家の本質を学んでいく小説です。
この小説は現代のパラレルワールドが舞台となっており、ギリシアはすでにユーロから離脱して、超貧乏国となっています。一方、日本では初の女性首相が生まれ、デフレから脱却し、経済成長路線の礎を築いたという設定です。
航太郎とソフィアは、国家の役割を最小に抑えて、経済を市場原理に任せて競争を激化させる「新自由主義」の考え方を持っており、自分のルーツとする国を軽視する主張をします。
でも、それは次第に変わります。まず、航太郎が自身の祖父の日記をたまたま読んで「国家の重要性」に気づき、次第に考えを改めはじめるのです。一方、ソフィアは最後までギリシアを批判し続けますが、そこにはソフィアがギリシア人と日本人のハーフだという出自の背景があり、祖国であるギリシアを愛する気持ちは充分に伝わってくるのです。
日本とギリシアという2つの国は、ルーツとする古い文化を国内に持っているという点で共通しています。日本では、例えば「神宮」という存在がありますね。初詣に行ったり、神頼みをしたりと、日常に「八百万の神」が根付いています。一方、ギリシアは古代ギリシア時代の建物が街中にあり、その文化を継承しているのです。
自分たちの国に絶望しながらも、2人の若者は、こうした文化をちゃんと受け継ぎ、愛していることに気づいていきます。先人たちから受け継いだこの国を、これからどう良くしていくのか。それを決めるのは政治家ではなく、国民自身であるはずです。
また、この小説は、政治や歴史、経済について学べるだけでなく、航太郎とソフィアの恋愛模様も描かれています。特にソフィアのツンデレぶりは見どころなので、そちらも楽しんでください。
(新刊JP編集部)
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