著書『クビでも年収1億円』(角川フォレスタ/刊)がベストセラーとなり、最新刊『3年で7億稼いだ僕がメールを返信しない理由』(幻冬舎/刊)も話題を呼んでいる小玉歩さんが、ゲストと「働き方」をテーマにトークを繰り広げる対談特集。第一回のゲストは中谷彰宏さんです。
作家・俳優と幅広く活躍している中谷さんですが、かつては会社勤めをしていたことも。
そんな中谷さんと小玉さんの間で「働き方」についてどのような意見が交わされたのでしょうか。
今回は後編をお送りします。
■待っている人のところにチャンスは来ない
小玉「中谷さんも、最終的には組織が合わないなということで会社を辞められたと思うんですけど、退職された時のエピソードはありますか?」
中谷「サラリーマン時代の最後の方は、もう自分の本を出していた。テレビでレギュラー番組も何本も持っていた。比較的自由だと思われている広告代理店にしても、副業に対しては厳しいんだね。年中呼び出しを食らってたから。
いつも広報から呼び出された。
その当時の上司がいい人でね、お前は“二足のわらじ”で行けと言ってくれた。俺もそうするから、と。でもその人は社内遊泳術がなくて、飛ばされてしまった。
次に来た上司は全く別のタイプで、はっきりしていた。“俺とお前は上司と部下ではない。お前は俺の奴隷だ”と、こういうタイプ。“奴隷になるのが嫌だったら、クビを選べ”と、そういう風に言われた。僕は“王様の奴隷ならいいけど、奴隷の奴隷は嫌だからクビにしてください”と言って、それでクビになった。
つまり、上に中途半端に“いい人”がいると、逆に自由になれないっていうことなんだね」
小玉「それで独立されたわけですね。独立して一人で食べていくっていうことだと、今はインターネットがありますし、中谷さんが独立された頃よりは簡単になっている気がしますね。僕自身その恩恵を受けていますし。
中谷「僕らの頃は、会社を作ろうと思ったら1000万円必要だったからね。アメリカは2ドルでよかったのに。28歳くらいの時にそれを知って、これはかなわないなと思った。
当時から、向こうでは大学生がみんな会社を作ってる。USCの連中もそうだし、美術の専門学校の学生だってそう。たとえば美大の学生なんかは、最初は自分でデザインしたTシャツを売るところから始める。そこからのし上がっていくんだね。
当時僕はロサンゼルスで仕事することが多かったから、現地でそういうのを見ていて、アメリカはチャンスの国なんだなと思った。チャンスは待っている人に与えられるのではなくて、アグレッシブに動いている人のところにくる」
小玉「風か吹くのを待つんではなく、自分でスカートをめくってしまえ、というの中谷さんの本にあったじゃないですか。そういうことですよね」
中谷「つまり、条件がそろうまで待つなっていうことだよね」
小玉「それと似た話で“ただいま起業準備中です”という方、結構いませんか?」
中谷「名刺に書いてある人がいますよね」
小玉「その人は、永久に準備をしているのでしょうね」
中谷「ハリウッドでヘアメイクをやりたいので、今日本で勉強しています、お金をためています、なんて言う人は、毎日1万人やって来る列の後ろにが並ぶっていうことがわかってない。
とりあえずアメリカに行って列に並んで、それから考えればいいのに、並ばないでどうすると。
例えばすごく混んでいるお店に行ったとして、僕ならどうするかというと、知り合いが来ているかもしれないと言って、とりあえず中に入れてもらって、グルッと一周します。本当に知り合いがいたら合流してしまえばいい。いなかった時は、また来ますと言って別の店に行く」
小玉「なかなか行動を起こせないというのは日本人の気質なのでしょうか」
中谷「最初に立てた予定通りに進めたいというのはあるんだろうけどね。
僕の出身は堺で、南蛮貿易の地なんです。昔、種子島に鉄砲が伝わった頃、その鉄砲が堺まで届けられて、刀鍛冶の職人が“何だこれ、自分でもやってみよう”と。そして、種子島に鉄砲が伝わった2年後の1545年にはもう国産の銃を作ってしまった。これはすごいよね。
そういう刀鍛冶の職人は、江戸時代になって銃が出回らなくなったら、今度は天体望遠鏡を作るようになった。明治時代になって自転車が日本に入ってくると、ぶつかって曲がったスポークを直すようになった。はじめて見るものだからちゃんとできるかわからないわけです。それでも職人は頼まれたら引き受けてしまう。実際、宮田工業は元々は鉄砲鍛冶ですよ。
よく、起業を目指す人たちが、何をやりたいかが見つからないと言うけどね、職人の人はそういうのとは正反対だよね。何をやりたいとかはなくて、来た仕事は何でもやるっていう」
小玉「中谷さんの本で、『面接の達人』という、就職活動をしている学生に向けた本がありますけど、学生に対してはどのように考えますか?“とりあえず就職しろ”というスタンスなのでしょうか」
中谷「好きなことをやるというのは大前提なんだけど、世の中の仕組みはこうなっているんだというのが一回分かると、もっと好きなことができる。
それと、日本の会社っていうのは、理不尽なことに対する耐性ができるし、自由のありがたみがわかる。そういう意味では、会社に入るというのはいいこともあると思う」
小玉「サラリーマン生活に不満を感じながらも長い間がんばった人って、意外と独立した後に一気に成功するイメージがあります」
中谷「一回エネルギーをため込んでいるから。だから、巌窟王が無実の罪で牢獄に閉じ込められたというような体験をしておくと、後で効いてくる。
ただ、あまりサラリーマンになじみすぎてもいけない」
小玉「最後にまとめの言葉をいただいてもいいですか?」
中谷「キーワードとしたら、“味わい尽くす”ということですね。面白い仕事、面白くない仕事と区別しないで、全て味わい尽くすという」
小玉「僕は、目覚まし時計で起きて行く仕事は良くない。そうやって強制的に起きて行かざるを得ない仕事は良くないと思っています。でも、サラリーマンの8割、9割がそうだと思うんですよ。その状況すらも、味わい尽くすことによって学ぶこともあるし、その先もあるというのは、僕の中で今日、一番に得たものですね」
(新刊JP編集部)
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