多くの業界が業績の停滞に喘いだ「失われた10年」の中で、急速に伸び続けている分野がある。それが「ネット広告」だ。
電通「日本の広告費」によれば、1996年は16億円だったインターネット広告費は、2000年に500億円、2005年には3777億円、そして2010年には7747億円と、飛躍的に拡大している。
さらに、その中でも近年成長しているのがスマートフォン向け広告だ。既存メディアとは異なる層へのリーチが期待され、これまで取りこぼしていた潜在ユーザーにアプローチするための一つの有効な戦略として活用されているという。
特にアプリについては、客の心に響くコミュニケーションを求めている企業が有効だと考えており、大手をはじめとした多くの企業が自社や商品をPRするためのアプリを開発しているという。
その現状をスマホ広告の現場に携わる野田大智氏が執筆した『究極のスマホAD戦略』(ダイヤモンド社/刊)から紹介する。
例えば、サントリーでは全国のバーを検索できるアプリ『BAR – NAVI by SUNTORY』や胡麻麦茶の『血圧おやじの健康帳』などのアプリをリリースしている。前者はスマートフォンのGPS機能を利用して、近くのバーを素早く探すことができる。後者は血圧や体重の管理などの健康対策を行うアプリだが、いずれも各商品に紐付けた"お役立ちツール"だ。
また、ライオンの栄養ドリンク『グロンサン』をモチーフにした『新お疲れさんアラーム』は、4人のグラビアアイドルを起用し、心地よい目覚めをサポートする演出をしてくれるアプリだ。他にも様々な機能が搭載されており、よくありがちな商品サイトやECサイトへのリンクによう誘導もなく、宣伝色を排除しているのが特徴だ。
これらのアプリは直接的な収益ではなく、ブランディングや商品のPRが目的となっている。ただ、そのため、既存の商品や企業のイメージとアプリの内容が食い違ってしまったときは、ユーザーやファンから受け入れてもらえないことが多い。
また、アプリ自体のPRも悩みどころの一つだ。アプリの開発コストは以前と比べれば低くなっているといえるが、それでも、ファンやユーザーに利用してもらえなければ、アプリの意味はない。開発コストに見合わなくなる。
一般的なPRの手法としてパソコンサイトやマス広告によるアプリリリースの告知があげられるが、他にもリアル店舗での告知・展開や、ユーザーがソーシャルメディア上で勧め合うような話題性を持たせることも大事になる。
また、アプリはリリース後一ヶ月が勝負だという。例えば「Google Play」は最初の一ヶ月間は新着コーナーに振り分けられ、注目されやすい。その注目されやすい間にアプリが広まり、インストール数が増えていけば、ランキングも上がっていくのだ。
つまり、告知も最初の一ヶ月でいかにダッシュするかが大事だが、野田氏は「経験上、認知を得るために最低限押さえるべき広告メニューを押さえれば、あとはほぼ自然な流れでユーザーを確保できる」と述べる。
インターネットがすっかり普及し、PRの形が多様化してくるなかで、今最も熱いのが「スマートフォン」の分野といえる。他の媒体とも組み合わせが可能で、多角的にPRすることができる。
『究極のスマホAD戦略』はスマートフォン向けの広告の今が分かる一冊。自社の商品にどう当てはめるかはその企業次第だが、事例から学べることも多いはずだ。
(新刊JP編集部)
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