物欲は限りなくあれど、この不況ではなかなか財布のひもをゆるめられない、というのは多くの人が実感しているところではないでしょうか。
しかし、そんな中でも、あの東京ディズニーリゾートを超える数の集客をしているショッピングモールがあります。
埼玉県越谷市の「イオンレイクタウン」の2011年の年間来場者数はなんと5000万人。これは、東京ディズニーリゾート(年間来場者数約2600万人)の倍近い数字です。これだけの消費者を集め、なおかつ飽きさせずに買い物をしてもらうためには、ただ巨大な商業施設を作るだけではいけません。
『成功するSCを考えるひとたち』(栗山浩一/著、ダイヤモンド社/刊)は、「イオンレイクタウン」を含め様々な大型ショッピングセンターの仕掛けを作り出し、成功に導いている株式会社船場が、その独自の手法を明かした一冊。
今回は本書のなかから、その手法の一部を紹介します。行ったことのある大型ショッピングセンターの構造を思い出しながら読んでみると、その裏に隠された意図が納得できるかもしれません。
■100mごとに休憩スポットを置いて消費者を休ませる
大型のショッピングセンターを設計する際には、敷地の両サイドに2つの核となるテナントを配置し、その間をモールと呼ばれる専門店のテナントで結ぶのが一つのセオリーなのだそう。
モールは全長1kmに及ぶものもあるため、消費者にとって様々なテナントが並ぶモールを歩くのは、楽しいと同時に疲れることでもあります。そのため、約100mごとに休憩が取れるアメニティスポットやカフェを置くなど、「歩いても疲れない」工夫が必要なのです。
■大型モールの端に家電量販店がある理由
また、設計の段階で、「施設内に入った消費者をどう誘導するか」を計算しておくことも欠かせません。その際に重要なのは、モールに来た人がよどむことなく常に一定の方向に流れ続けることで、そのためには施設内に"突き当り"が存在しないことが望ましいのだそうです。しかし、現実には様々な要因からそうはいかないことがほとんどです。
前述のようにモールの両端に、家電量販店やファストファッション店など、核となる(=集客を見込める)施設を配置しているのは、人の流れが弱くなりがち(訪れる人が少なくなりがち)なモールの端を強化するためなのです。
■消費者を歩かせる秘訣は「カーブ」
来店した消費者にモール内を歩かせるための工夫はそれだけではありません。
栗山さんは、多くのプロジェクトの場合、モールは単純な直線になっておらず、自分の前100mくらいが見通せるところで、あえてカーブを作っているといいます。
敢えてモールを曲線にすることで、歩いていくと徐々に先が見えてくる形となります。消費者はその先を見るために自然と足が進むというわけです。自分の意志で好きな場所に歩いていると思いきや、実は誘導されていたなんてびっくりですね。
本書には、この他にも大型ショッピングセンターの立ち上げから、オープンまでに仕込まれたアイデアや工夫の数々が紹介されています。
馴染みのあるショッピングセンターや商業施設を思い出しながら読むと、その緻密な設計とアイデアに誰もが唸らされるはずです。
(新刊JP編集部)
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