不況でモノが売れない時代といわれる今も、会社からノルマを課せられ、売ることを半ば強要されるセールスは過酷な仕事です。
ノルマのプレッシャーがきつければきついほど、それをクリアするためにセールスマンたちは手当たり次第に顧客を増やしにかかりますが、中には「手を出してはいけない顧客」に手を出したせいでひどい目に遭うケースもあるようです。
今回は『営業マンは、「苦手なお客」を捨てなさい。』(学研パブリッシング/刊)の著者、菊原智明さんが不動産の営業マン時代に体験した「モンスター客地獄」を取り上げてみようと思います。
「使えないバカな営業は切ったけど、君のところは今のところ残してあげるよ」
顧客からの電話を取った菊原さんが聞いたのは、信じられない言葉でした。
40代半ばのその顧客は堅い職業で、自己資金も貯めており、資産的には言うことなし。しかし、問題はその人柄だったのです。
露骨に「客が上で営業は下」というスタンスで接してくるその顧客に、菊原さんは「自分とは性格が合わなそうだ」と早々に苦手意識を持ったといいます。とはいえ顧客は顧客、そうも言っていられません。二回ほど提案をしたところで、その顧客は「これで一度検討するから、まあ期待せずに待っていろよ」と横柄な一言。そこで一度アポイントが途切れました。
その顧客は菊原さんの会社を含めて10社以上まわって物件を比較検討していたため、菊原さんはあまり期待せずに待っていたのですが、しばらくするとその顧客から連絡があり、冒頭のセリフを投げかけられたのです。
その後さらに候補は絞られ、残り3社まで菊原さんの会社は残ります。こうなるともう後には引けません。
菊原さんはなりふり構わず、値引きに値引きを重ね、「これで決めてください!」と何度も頭を下げて契約を取りにいきました。まさに土下座営業です。
その甲斐あって、なんとか契約にこぎつけることができましたが、この時点で「何ごとも完全に顧客が上で、営業は顧客の言うことを何でも聞く」という関係性が出来上がってしまい、これがその後菊原さんを苦しめることになります。
契約後の打ち合わせでは、オプションの追加をサービスでやることを強要し、菊原さんが断ると契約自体を考え直すと脅しをかけ始めた顧客。
すでに、契約の段階で値引きに値引きを重ねていたため、これ以上の値引きは絶対にするなと会社から言われていた菊原さんは、完全に顧客と会社の板挟み状態になってしまったそうです。
そして、さらに地獄は続きます。
施工が始まってからも、打ち合わせになかった設計を無料で追加しろと無茶をいい、別途費用がかかることを告げると工事自体の中止をほのめかす顧客に、菊原さんは翻弄されてしまいます。その度に会社からは始末書を書かされ、物件の引き渡し日まで生きた心地がしませんでした。あまりのストレスに仲間から心配されるほど性格が暗く落ち込んでしまったといいます。
この一件で菊原さんは「どんなに契約がほしくても、苦手な顧客と付き合ってはならない」ということを実感したそう。そしてこの経験を元に、嫌な顧客と無理して付き合わず、「相性のいい顧客だけ」と付き合う「弱者の戦略」を磨き上げ、4年連続売上トップを記録、営業マンとして大きな飛躍を果たしたのです。
顧客を選り好みして成績を上げるなんてできるわけがないと思う人もいると思いますが、菊原さんはこの方法でも平均的な成績をあげることができるばかりか、一気に成績が伸びる人もいるといいます。
この「弱者の戦略」の全てを明かし、顧客を取れない営業マンの悩みに読者の立場から答えている本書は、悩める営業マンを救い、癒す一冊となるはずです。
(新刊JP編集部)
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