『桐島、部活やめるってよ』(集英社/刊)でデビューし、11月30日に新刊『何者』(新潮社/刊)を刊行した朝井リョウさんと、著書『晴天の迷いクジラ』(新潮社/刊)で第3回山田風太郎賞を受賞した窪美澄さんのトークイベント&サイン会が、12月16日(日)に東京・立川のオリオン書房ノルテ店で行われた。
朝井さんの新刊『何者』は、大学生の就職活動をモチーフに、ネット時代の自意識を描いた意欲作。窪さんの『晴天の迷いクジラ』は、性格もバックグラウンドも違う、ただ死のうと思っていることだけが共通する三人の旅から、生きることとは何かを浮き彫りにする長編だ。
共にデビュー作がベストセラーとなった二人だが、トークショーでは二人のちょっとした“因縁”の話題に。
2009年、窪さんが「女による女のためのR-18文学賞」(新潮社主催)の大賞を受賞した時のこと。受賞作品を収めた連作長編を刊行する際、窪さんは受賞作と同じ名前の『ミクマリ』というタイトルを希望したが、担当編集者が「今、こういう長めのタイトルの本が売れているんだ」と出してきたのが、朝井さんの『桐島、部活やめるってよ』だったのだ。
この書名に引っ張られる形で窪さんがつけたタイトルが『ふがいない僕は空を見た』(新潮社/刊)であり、この作品は第24回山本周五郎賞、2011年本屋大賞の第2位という栄誉を勝ち取った。
その後は、互いの作品や人となりに言及。
朝井さんが窪さんの小説について「僕には絶対に書けない登場人物を書いている。だから、マリア様だと思っていたが、会うと気さくな人だったと」語り、窪さんは、「デビュー作であれだけ多彩な視点で書けるというのは、他人の気持ちをすごく考えて生きてきた人だと思う。『桐島、部活やめるってよ』は完成された作品だと思いますけど、今回の作品ではそれがさらに進化している」と、朝井さんの新刊『何者』を評した。
今最も勢いのある作家と言っても過言ではない二人。それだけに、イベントの最後に行われた読者からの質問コーナーで今後の野望を聞かれると、共に「作家になれてよかったと思っている。今後もずっと書き続けていきたい」と語った。
トークイベントの後にはサイン会が行われ、会場に詰めかけた読者で長蛇の列ができたが、両氏ともそのひとりひとりと言葉を交わすなど、会場は終始和やかだった。
(新刊JP編集部)
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