私たちが普段何気なく使っている日本語ですが、常識だと思って使っているだけに、まちがった使い方をしても気づきにくいものです。
『日本人が気づいていないちょっとヘンな日本語』(デイビッド・セイン、長尾昭子/著、アスコム/刊)には、日本人が知らず知らずのうちに使っている“実はまちがっている日本語”が取り上げられています。
今回は本書の中から、いくつか取り上げてみますので、自分の日本語が間違っていないかどうかチェックしてみてください。
■「ピンからキリまで」、いい方はどっち?
「最高から最低まで」といった意味で使われるこの言葉。日本人ならほとんどの人が一度は使ったことがあると思いますが、その語源はあまり知られていません。また、「ピン」と「キリ」のいい方はどちらかということも、誤解されがちです。
「ピンキリ」の“いい方”は「ピン」で、ポルトガルの「pinta」が語源。この単語は「点」という意味で、サイコロの1の目を表します。そのため最上、最高を意味するのです。
対して、“最低”を示す「キリ」には諸説あり、ポルトガル語の「cruz」(十字架)から10を意味しているという説と、日本語の「限り」を意味する「切り」が語源となっているという説があります。何気なく使う言葉ですが、成り立ちを知るとおもしろいですね。
■コンビニの日本語はまちがいだらけ?
コンビニでアイスを買った時、店員から「スプーンは大丈夫ですか?」と言われたことはありませんか?
聞き慣れているせいかあまり変だとは思わないかもしれませんが、よく考えると、「スプーンをつけていいですか?」と聞かれているのか「つけなくていいですか?」と聞かれているのかわかりません。これもおかしな日本語です。
本書のもう一人の著者である長尾さんは、「大丈夫」には元々「立派な男子」という意味があり、そこから「非常に強い」という意味に。それがやがて「間違いない」という意味に変わっていったといいます。
「スプーンは大丈夫ですか?」はこの「間違いない」という意味が拡大されて使われるようになったと思われます。ともあれ紛らわしいには違いないので、きちんと意味が伝わるように聞くのが賢明です。
他にも「一万円からお預かりします」「○○のほうお持ちしました」など、接客で使われる日本語にはちょっとヘンなものが多々あります。
■「役不足」、不足なのは「役」か「能力」か?
多くの日本人が逆の意味で使っているのが「役不足」です。
本来の意味は「本人の力量に対して、与えられた役目が軽すぎること」ですが、「与えられた役目に対して、本人の力量がたりないこと」だと誤解しがち。こちらの意味で使う時は「力不足」というのが正解です。
正しい意味を知っている上司の前で「この仕事は僕には役不足です」と言ってしまったら生意気だと思われかねないので、気をつけなければいけませんね。
いつもは意識せずに使っている日本語ですが、実は意味を知らずに使っていたり、まちがった使い方をされている言葉は案外たくさんあるものです。
本書には、そういった“ちょっとヘンな”日本語が網羅されていますので、人との交流が増える年末年始に言葉で恥をかかないよう、自身の日本語をチェックしてみてはいかがでしょうか。
(新刊JP編集部)
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