「いい落語会とはなんだ」―。毎日、驚くほどの数の落語会が行われている。落語情報誌「東京かわら版」を見ていると、あまりの多さに驚いてしまう。その落語会のひとつひとつに主催者がいる。客の入っている会、まったく入っていない会とそれぞれだ。
そのなかで、著者がとても気になった落語会があるという。それを主催しているのが、この本で取り上げているオフィスエムズの加藤浩さん。当然のことながら、落語会は落語家だけでできるものではない。その裏方の人たちがいて、初めてできる。
加藤さんを通して落語会を見ると、そこにはまた違った姿があり、とても新鮮だ。数多くの主催者の中で、この人に焦点を当てた理由がよく分かる。加藤さんは、ただ金もうけのために落語会をやっているのとは違う。本当に、落語が好きで仕方がないのだ。だから、落語家にも信頼されている。これまであまり落語会の主催者のことには興味がなかった人も、落語会の見方が変わることになるかもしれない。
こうした視点の本はなかったから、とても興味深い。今後、落語会の主催者のことが気になるようになり、さらに楽しむことができるようになるかもしれない。これから落語会を主催したいと思っている人には、とてもいい参考書になるだろう。
著者の名前(おちだ・わらえ)は当然、ペンネームだが、江戸時代の戯作者を意識して付けたものだという。
書名:席亭志願
著者:越智多藁恵
出版社:彩流社
定価:1995円