読むべき本、見逃していない?

美味しいパン屋があると商店街に賑わいが戻る

  • 書名 空き家活用術2 通りからはじまる“まち”のデザイン
  • 監修・編集・著者名高橋大輔 編著
  • 出版社名建築資料研究社
  • 出版年月日2019年2月25日
  • 定価本体2500円+税
  • 判型・ページ数四六判・286ページ
  • ISBN9784863586291

 高齢化が進み、全国的に空き家が増えている。また商店街では廃業した店舗が目立ち、シャッター商店街と呼ばれるところも。本書『空き家活用術2 通りからはじまる"まち"のデザイン』(建築資料研究社)は、不動産ストックビジネスによる小さなまちづくりの事例を紹介した本だ。

 「はじめに」で住宅保証機構の井上雅夫常務がその意義を書いている。まちの空洞化に対して行政は都市のコンパクト化を掲げ、さまざまな対策を講じてきたが、補助金を頼りにした解決は難しくなっていると。

 評者のような門外漢でもいくつかの失敗例をすぐ挙げることができる。たとえば青森市が青森駅前に作った商業施設「アウガ」は経営が破綻。秋田市が中心部に作った「エリア中一」もイベント開催時には人が集まるが、ふだんは閑散とし、テナントの入れ替えがしょっちゅう行われている。国の中心市街地活性化の補助金による「箱モノ」の建設では対応しきれなくなっているのだ。

不動産ストックの活用を

 井上さんは、意外にも民間事業者がビジネスベースでまちなかの再生に挑んでいる事例が増えている、と指摘する。リスクは取れないから小規模なものからスタートせざるを得ない。また既存の不動産ストックを利活用しながらの事業となる。本書で紹介する「小さなまちづくり」である。

 取組事例が10例ほど載っている。一級建築士や建築系の大学教員らが当事者に取材する形で書かれているので、客観性もある。栃木県鹿沼市の廃屋と廃路地を活用したカフェからのまちづくりや愛知県豊田市足助の重要伝統的建造物群保存地区での取組など、全国各地でさまざまな取組が行われていることがわかる。

 編著者の高橋大輔・共立女子大学教授(一級建築士)は自身がかかわった東京都大田区蒲田のキネマ通り商店街の事例を紹介している。

 かつて松竹蒲田撮影所があり、働く職人たちが多く住んでいたとか「蒲田キネマ」という映画館があったから名前がついたという。今は映画館もなく閑散としているが、NPO 法人「キネマフューチャーセンター」が地域資源の発掘と広報を担い、地域映画の制作などをしている。センターと言っても以前は布団屋だった店舗を改装した長屋だ。2年前から高橋さんの研究室の学生が中心となり、さまざまなワークショップを行ってきた。これから空き家再生が始まるという段階だが、地元の人と外部が協力して事業を進めるスタイルは参考になるだろう。

 愛知県豊田市足助の事例を読み、感慨深いものがあった。私事で恐縮だが、30年ほど前、旧足助町時代に評者は、古い町並みをいかしたまちづくりのプラン作りにかかわったことがあった。豊田市に合併されたため、どうなったのかと思っていたが、平成23年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、住民による「町並みサポーター」がさまざまな活動をしていることを知った。

 本書ではこのほか、広島県福山市、徳島県美波町、高知県香南市、鹿児島県南九州市などの事例が報告されている。地方の小さな取組なので、全国的に知られることはあまりないが、いま確実に各地で同じような事業が進んでいることは間違いないだろう。

 冒頭に出てきた井上さんは、あるまちづくりの権威のことばを紹介している。どうしたらまちなかの賑わいを取り戻せるかという質問に「美味しいパン屋さんがあるといいですよ」と答えるのだそうだ。美味しいパンにこだわるのなら、これまでまちづくりにあまりかかわってこなかった女性や若い人、シニアの視点をいかしたまちづくりが出来るからだ、という思いがあるからだという。

 本欄では、名古屋市のさびれた商店街の再生を取り上げた『名古屋円頓寺商店街の奇跡』(講談社+α新書)を紹介済みだ。  

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