性行為などで感染する梅毒の患者が増え続け、今年(2018年)48年ぶりに6千人を超える見通しであることが先月(11月)報道された。厚生労働省は20代前半の女性が特に多いとし、来年(2019年)1月から性風俗への従事歴や利用歴を医療機関の届け出内容に加えることにした。該当する人は医師に正直に申告しなければならないから、とんだ「罰ゲーム」である。
そんな怖い感染症について、かわいいイラストで楽しく学ぼうというのが本書『菌娘と学ぶ感染症イラスト図鑑』(宝島社)である。細菌やウイルスなどの病原体を擬人化したキャラクター「菌娘(きんむす)」とともに感染症の特徴や予防法を学べる図鑑だ。ビフィズス菌、ウェルシュ菌、インフルエンザウイルスといった身近に潜むものから、緑膿菌、梅毒、チフスまで79種が取り上げられている。
変な本だなと思い、ページをめくり、その萌えキャラの充実ぶりに衝撃を受けた。著者の「医療美術部」は、医師、看護婦、薬剤師、医療系学生らで作る創作グループ。本書も同人誌から書籍化された。
たとえば「黄色ブドウ球菌」は、黄金の鎧(よろい)や紫色のマントをまとった美少女風のキャラクターだ。「この黄金の鎧は、大抵の抗菌薬なら通さない!」というセリフもあり、見た目で菌の性質がわかるように工夫している。
「大腸菌」のキャラは、きれいなアクセサリーを身につけている。これは赤痢菌からプラスミドというアクセサリー(DNA分子)を受け取ることで、性格や能力が変化して病原性のO157などになることを表しているという。
一つの病原体が見開き2ページで取り上げられ、左がイラスト、右が解説や臨床症状、模式図で構成される。確かに右ページだけだと読む気がしない。左ページのイラストのおかげで最後まで読み通し、かなり病原体について詳しくなったような気がする。本書のコンセプトに脱帽。
ところで、冒頭ふれた梅毒は「梅毒トレポネーマ」という菌が引き起こす。このキャラはらせん状(スピロヘータの特徴)の髪型のかわいらしい少女に描かれている。赤いベストは症状に見られる発疹を表しているという。
死に至る病も少なくない。どの病原体も本書イラストの魅力的な外見に惑わされず、注意が必要なことは言うまでもない。
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