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「人生100年時代」に使おう、眠ったままの脳細胞

50歳を超えても脳が若返る生き方

 少子高齢化時代の本格化に備えて、AI(人工知能)などを使った省力化・無人化と並び期待されているのは、中高年あるいは高齢者の現役期間延長といえる。定年になったからと引っ込んではいられないのだ。そうは言っても...と、しり込みするあなたに読んでもらいたいのが本書『50歳を超えても脳が若返る生き方』(講談社)だ。

「潜在能力細胞」で補える

 現代人は「定年=人生の終わり」のような捉え方をしてしまいがち。本書は「これは、いますぐ改めるべき」と訴える。「定年後も、まだまだ脳が成長する人生が用意されており、定年は間違いなく、第二の人生のスタートだから」。

 著者は、脳内科医師の医学博士。発達脳科学、MRI(磁気共鳴画像)診断の専門家で、これまで約1万人以上の脳をMRIを使って分析、診断・治療してきたという。その経験などから、人間が50歳を超えてもなお脳は成長を続けることを確認し著作や講演などで、その啓蒙活動にも努めている。

 加齢により脳の神経細胞が減少するのは間違いないことなのだが、だからといって脳が衰えるわけではないという。この減少を補って余りある「潜在能力細胞」があると著者。「たしかに脳の神経細胞は、ある年齢に達すると減り始め老化していく。しかしその一方で、脳には使われずに眠ったままの神経細胞が膨大に残されている」。どのくらい膨大かというと「一生かけて、おそらく全体の1%以下しか使っていない」という。これらを生かして、人生の後半に向け脳を若返らせることができるというわけだ。

「会社脳」からの脱出

 本書が見据えているのは「人生100年時代」の到来。そうした長寿社会を安寧に過ごすためにはとくに男性の意識改革の必要性を訴える。

 「100歳以上の人口は全国で約6万7000人いるが、このうち女性が88%を占め、男性はたった12%に過ぎない。多くの男性が仕事一筋で生きてきてやがて定年。その脳は会社人としての専門性ばかりが確立され、ほかのこと、趣味に対しては機能しにくくなる。結果、定年後に無気力になり、最悪の場合には認知症を発症してしまうこともある」

 定年退職を機にジワリと始まることが多い脳の劣化。それは長年の勤務でできあがってしまった「会社脳」のためという。男性の方がより、潜在能力細胞を生かした脳の変革や若返りが求められるのだ。

 会社生活から解放されてしばらくは脳を休めることはいいでしょう。しかし、それを続けていると脳は衰える一方だ。それは「脳のエネルギー消費が足りないから。働いているときに脳を使うエネルギーと、定年後に使うエネルギーの落差が大きすぎるから」。だから、しばし休憩ののちに在職時と同じくらい脳を使う必要があるという。

 女性がライフスタイルや美容などで年齢を重ねてもなお好奇心旺盛で、家事をこなさなければならないなど、脳にとっては良い環境を持続する傾向が強い。男性もこのことを見習って、自分の欲求を箇条書きして実現希望のランキングを付け行動することなどを本書は提案する。

 「脳をいつまでも成長させ、その機能を最大限に使うためには、一つの単純な必要条件がある。それは、前向きな気持ちで生きること。前向きになると、脳のなかで使われずに眠っている潜在能力細胞を目覚めさせることができる」

黒柳徹子さんの脳には「おしゃべりの高速道路」がある

 本書ではまた、脳が若返りを続ける具体例として、長年第一線で活躍を続ける著名人らをMRIを引用するなどして紹介。タレント、黒柳徹子さんの脳には「おしゃべりの高速道路」があり、赤ちゃん並みの好奇心がみられるという。アーティスティックスイミング(シンクロナイズドスイミング)の指導者、井村雅代さんの脳を鑑定したところ、脳年齢が30代後半の若さを保っていることが分かったことなども報告されている。

 ほかに、銀座クラブホステスの客の名前の覚え方や、昨今社会問題化している「キレる高齢者」をめぐる専門家の立場からの解説、脳に効果がある食事法、イメージトレーニング法など盛りだくさん。読みこなすだけでも脳に効果がありそうだ。

  • 書名 50歳を超えても脳が若返る生き方
  • 監修・編集・著者名加藤 俊徳 著
  • 出版社名講談社
  • 出版年月日2018年8月21日
  • 定価本体880円+税
  • 判型・ページ数新書・256ページ
  • ISBN9784065120965
 

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