ビジネスで重視されるコミュケーションツールといえば「英語」を思い浮かべる人がほとんどに違いない。グローバル化を理由に大学受験でも英語の実用重視が見込まれている。ところが、本書『マンガでわかる デキる人は「数字」で伝える』(幻冬舎)によれば、英語のセンス以上に数字を使った会話力を磨くべきという。そういえば、先ごろ、都内の有名私大が人気文系学部の入試で数学を必須化する計画を明らかにし衝撃をもたらした。こちらの入試改革の方がより実用的なのかも。
著者は、ビジネス数学の専門家である理学修士で、国内初のビジネス数学検定1級AAA認定者。ビジネス数学は1~3級があり各級とも合格点は70点で、1級のみA合格(70点以上)、AA合格(80点以上)、AAA合格(90点以上)のランク設定がある。キャリアや資格をいかして、研修講師やコンサルティングを行っている。
本書は、飲料メーカーと思われる企業の営業部で関東チームリーダーの肩書を持つ女性社員が、ワインバー出店という新規事業プロジェクトを任されて、その実現までのストーリーを通して、数字のコミュニケーション力を示すというもの。ストーリーをマンガで追えるので、文章だけだとくどくなりがちになると思われる「数字」の説得力についての説明が分かり易い。
プロジェクトを任された女性社員はさっそく企画書にとりかかる。数日後の出来あがった企画書には「誰もがリラックス」「ナチュラル空間」などが並ぶ。新たにオープンしたカフェのキャッチにありがちな抽象的なイメージばかりが先行。その場で部長からダメ出しをくらい、その相談相手として登場するのが「数会話コンサルタント」を名乗る男性だ。コンサルタントは、女性社員の企画書に「数字」が不在だったことをたちまちに指摘。以後、このコンサルタントに導かれて、具体的な数字を配したプレゼンテーションで成功の軌道に乗っていく。
女性社員は最初に企画書で「きちんと裏付けのあるものを持ってこい」と命じられる。彼女は「いきなり店づくりの細かい数字の裏付けをとるのは無理」とコンサルタントにナキを入れる。著者によると、数字が苦手な人ほど、正解を気にして、「仮に」考えるのが苦手と指摘。話をすすめるためには、それぞれの局面での規模感がわかれば十分だと述べる。
たとえば見積もりを聞かれた営業職のリアクション。「いまはちょっとわかりかねます。社に持ち帰らせていただけますか」というものと「正確な金額は後日ご提示するとして、ざっくり100万円くらいでしょうか」というものが考えられるとすると、おすすめは後者なのだという。
「仮に」考えていくことを進化させ、飲食店を考える上では、商品ジャンルのラインアップを整理し、それぞれの単価や想定客数を量化、それらを合計し想定売上を捉え、さらに詰めていくことで、裏付けがある企画書を仕上がっていく。
こうしてできたせっかくの企画書なのだが、やってはいけないグラフのNG行為が過失になってプロジェクトが滞ることもあると注意を促す。たとえば円グラフの角度をつけた配置にし、割合が劣るものが多く見えたり、その逆のことが起きたりして真意が伝わらなくなる場合があるという。
企画書が通り、いざプレゼンとなったらここでも「数学的でなければならない」と著者。だが、ある企業研修で、理路整然として完ぺきなプレゼンというのはいかがなものかと言われたことがあるそうで「1割はハートで」とアドバイス。「数字や論理による数学が9割、情熱や人間性のハートが1割」が「相手を動かすプレゼンの黄金比」という。
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