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女の35歳、「もう時間がないんだよ」

デートクレンジング

 本書『デートクレンジング』(祥伝社、2018年)は、自分らしく生きたいと願う全女性にエールを贈る、柚木麻子の書き下ろし小説。「デートクレンズ」とは、アメリカの造語。どんどん焦ってしまう時期は、あえてデート断ちをして、自分を取り戻す時間を意識的に持とうという意味がある。

 「仕事、結婚、妊娠、出産......新しいステージに進むたび 私たちを引き裂こうとする何かに全力で抗い続けたい――」(本書・帯より)

 過去を振り返り、将来を見据えるため、いったん立ち止まる。そこで軌道修正したり、あるいはこのまま進もうと改めて決意したり。女性にとっての35歳は、そんな年齢なのだろう。佐知子と実花はともに35歳で、親友の間柄にある。16年に及ぶ付き合いの中で、誰よりも輝いて見えた実花は、佐知子のアイドルだった。

 佐知子は5年前に結婚し、夫の実家の喫茶店で働きつつ、妊活中。実花はアイドルグループ「デートクレンジング」のマネージャーとして人生を捧げたが、グループ解散という苦い経験をした。

 「私には時間があんまりないんだよね」と、仕事の挫折と年齢から来るプレッシャーで、実花は婚活に突っ走るようになる。年齢を重ね、気づけばそれぞれ異なるステージに進んでいた2人に、すれ違いが出始める。

 「環境が似たもの同士じゃなきゃ、女は仲良く出来ないようになっているんだから」という登場人物のセリフに、「確かに」と思う。立場の違いから、どれだけ仲の良かった友人でも、同じ関係性でいられなくなることはある。

 「いつになったら、私たちはタイムリミットから解放されて手を取り合うことが出来るんだろう。世界中にある時計を1つ1つ、金槌で壊して歩けたら」と思った後、「カチカチという音と共存する方法を探るしかない」と佐知子は気づく。

 どの年齢にどのステージにいたとしても、早過ぎ・遅過ぎはない。その人が選択した生き方だと、認め合える関係性がいい。著者は、女の本音を鋭く捉えて、女同士のステージの違いによるぎくしゃくした感じを、ありのまま描写している。

 著者の柚木麻子は、1981年生まれ。主人公とほぼ同世代だから、実感がこもる。2008年「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞。10年に同作を含む『終点のあの子』でデビュー。15年『ナイルパーチの女子会』(以上、文藝春秋)で山本周五郎賞受賞。ここ数年、毎年のように直木賞候補になっている。女性の心理や女性同士の関係を描いた作品で定評がある。


BOOKウォッチ編集部 Yukako)
  • 書名 デートクレンジング
  • 監修・編集・著者名柚木 麻子 著
  • 出版社名株式会社祥伝社
  • 出版年月日2018年4月20日
  • 定価本体1400円+税
  • 判型・ページ数単行本・232ページ
  • ISBN9784396635411
 

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