5月病の季節だ。心身の不調を感じ始めた人もいるかもしれない。そんな人に参考になりそうなのだが、本書『新版 大学生のこころのケア・ガイドブック』(金剛出版)。
2007年刊の初版を10年ぶりにリニューアルしたものだ。SNSの登場など時代の変化に合わせていくつかの章が追加され、増補改訂されている。
著者の福田真也さんは精神科医。複数の大学で、学生の相談や診療に従事し、心療クリニックの外来でも学生の診察をしている。学生の心の問題のエキスパートだ。
本書を読んで、まず驚いたのは、最近は学生連合公認サークルとして、「LGBTサークル」があるということ。「性的マイノリティを問わず部員を募集し、週3回のランチ会と月に1回のLGBTについての勉強会を開いています。部員は50名」という案内が、公認サークルガイドブックに載っているそうだ。
ある大学の調査によると、同性愛者は女子学生で2.1%、男子学生で0.5%、バイセクシュアルは5.3%、トランスジェンダーが1.4%だという。
大学に入ったときは「学ラン」。在学中に性同一障害と診断されカミングアウト、多目的トイレを使うようになり、ホルモン療法で外見も大きく変わって卒業式は「袴」だったという学生。あるいは自分はゲイで、友人が好きで好きでたまらないのだが、彼はゲイではないので打ち明けられない・・・など、それぞれにとっては深刻な悩みの実例が本書には登場する。
当然これらは、リニューアル版で新たに付加された章に収められている。この10年で、それだけ世の中が変わったということだ。おそらくは相談例も増えているに違いない。大学側もきちんと対応する必要がある。
もちろん本書には、アスペルガー、ボーダーライン、パニック障害、ひきこもり、うつ、統合失調症など以前から問題になっている諸症状や病気、リストカット、過食、PTSD、ハラスメント、さらにはカルト、自己啓発、悪徳商法など、大学生とかかわりのある話も。奨学金やアルバイト、就活などの悩みも出てくる。
・コンビニのバイト先でストーカー被害
・彼女が突然自殺した
・卒論の指導教官がパワハラ
・深夜までキャバクラで働かないと授業料が払えなくて、不眠症に
拾い読みするだけで、学生ならあちこちに、他人事ではない話を見つけることができるに違いない。本欄ですでに紹介した『精神障がいのある親に育てられた子どもの語り』や『死を思うあなたへ』に関連するような事例も出て来る。
どの大学でも、1割ぐらいの学生が心理的問題を抱え、専門家の支援が必要とみられているそうだ。ところが実際に相談室を訪れ、精神科医と面接する学生は、大きな大学の場合だと全体の1%以下に過ぎない。水面下で悶々としている学生が少なくない。月別ではやはり5月に相談室を訪れる学生が一番多いそうだ。迷っている人は本書を読むか、とりあえず相談室を訪れてみては。
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