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最新毛髪再生医療、5000本で2000万円ナリ!

やさしくわかる! 毛髪医療最前線

 男性型脱毛症(AGA)という言葉も定着し、いろいろな治療を受けられるようになってきた。専門医にいま受けられる治療とこれから期待される治療を尋ねたのが、本書『やさしくわかる! 毛髪医療最前線』(朝日新聞出版)だ。若いころから薄毛に悩んできた人にとっては、参考になるかもしれない。

 男性ホルモンのテストステロンが酵素と結びついて薄毛を引き起こすことが分かっており、この酵素の働きをブロックし、脱毛を抑制する薬として開発されたのが、内服薬の「フィナステリド」で2005年から「プロペシア」の商品名で発売されている。また塗り薬の「ミノキシジル」は「リアップ」の商品名で流通している。日本臨床毛髪学会常任理事の倉田荘太郎医師は塗り薬を試し、次に内服薬、満足できなければ、さらに自毛植毛と進んだらいいとアドバイスする。

 7年ぶりに治療のガイドラインが2017年に改訂され、新しい薬や治療法が加わった。変更点について、監修の大阪大学大学院の板見智教授は、レーザーや赤色LEDによる光治療のエビデンスが出てきたので追加したという。ただし、国内では医療機器として承認されたものはまだない。 赤色LEDによる光治療を行っている大阪大学医学部招聘教授の乾茂樹医師によると、ナローバンド(幅の狭い波長)の赤色LEDをマウスに当てたところ、発毛の効果があったという。ほかの薬との併用で効果が高まることが期待されている。

 このほかに、毛髪を作る細胞を培養して増やし、本人の頭皮に移植する毛髪再生医療の研究も進んでいるようだ。北里大学医学部の佐藤昭男特任教授によると、2020年をめどに毛包にある二つの幹細胞を合体させて移植する臨床試験を行いたいという。ただし、5000本移植するのに2000万円くらいかかりそうだという。10年後のコストダウンを期待したい。

 2013年にはヒトiPS細胞を作った毛包の部分再生に成功したが、杏林大学医学部の大山学教授は、決定的な治療法がなかった女性型脱毛症に使えるかもしれないと話している。

 昔から「ハゲの特効薬を開発したらノーベル賞もの」という冗談をよく聞いたが、現代の医療は、地道に研究開発を続けていることが分かった。とは言え、万人がその効果を享受する日はまだ先のことのようだ。

  • 書名 やさしくわかる! 毛髪医療最前線
  • 監修・編集・著者名監修 板見智 毛髪医療特別取材版 著
  • 出版社名朝日新聞出版
  • 出版年月日2018年3月30日
  • 定価本体1200円+税
  • 判型・ページ数四六判・167ページ
  • ISBN9784023316805

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