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「生きたあかし」、この方法で残すことができる

遺贈寄付 最期のお金の活かし方

 「よしとする 生きたあかしが なにもない」――浅利桂子さんという70代の人がつくった川柳だ。朝日新聞に毎日連載されている哲学者鷲田清一さんのコラム「折々のことば」で取り上げられていた。本書『遺贈寄付 最期のお金の活かし方』(幻冬舎)の中でも紹介されている。

 たしかに、長生きしても、「生きたあかし」がないと寂しい。何とか「あかし」を残せないか。本書の著者で立教大学講師の星野哲さんは「こんな方法がありますよ」と勧める。それが「遺贈寄付」だ。

社会への「恩返し」

 本書によれば、亡くなったとき、遺言で財産の全部または一部を、公益法人やNPO法人、学校などに贈るのが「遺贈」。さらに遺言がなくても相続人が故人の遺志を受けて公益のために寄付することや、信託を使う方法を含めて「遺贈寄与」と呼ぶ。この方法を使えば、お金に自分の思いを託し、その思いを社会的に生かしてもらうことが可能だ。お世話になった社会への「恩返し」になる。

 苦しんだ病気の治療法開発に生かしてほしい、子供たちの奨学金に使ってほしい、紛争地域で活動する医療者の活動資金にしてほしい...。

 近年、相続財産の規模は年間37兆から63兆円に上るそうだ。その1%でも数千億円になる。それが、遺贈寄付の形で社会に回るようになれば随分と恩恵を受ける人が生まれる。ところが現在は、「遺贈寄付」自体が余り知られていない。やりたいという潜在的な希望者はいるはずなのに、活用されていない。

「介護デザインラボ」を立ち上げる

 本書は第1章で、実際に遺贈寄付した人の親族や、これからしようと準備している人を取材し、「思い」を聞いている。第2章では、遺贈寄付をしようと思ったとき、どう動けばいいのか、そのプロセスをモデルケースをもとに紹介している。第3、4章では遺贈寄付に関係する法律や税金、信託制度について説明している。

 著者の星野さんは元朝日新聞記者。『葬送流転 人は弔い、弔われ』(河出書房新社)、『終活難民 あなたは誰に送ってもらえますか』(平凡社)など葬送や終活関連の著書がある。新聞社を早期退社し2017年、在宅看取りをサポートする一般社団法人「介護デザインラボ」を立ち上げ、理事となっている。記者として長年追究してきたテーマをさらに当事者として実践しようと、新たな活動に取り組んでいるわけだ。この仕事がいまや星野さんの「生きているあかし」になっている。

 そういえば、評者の肉親も、亡くなって初めて分かったのだが、クレジットカードのポイントをすべて紛争地域で活動する医療者のNGOに回していた。行きがかりで、香典の多くはそのNGOや、ほかの二つのNGOに寄付した。10数年前のことだが、今から思えば、遺贈寄付というわけだ。NGOからはその後も活動記録が送られてくるので、故人に代わってわずかだが、寄付を続けている。

  • 書名 遺贈寄付 最期のお金の活かし方
  • 監修・編集・著者名星野哲 著
  • 出版社名幻冬舎
  • 出版年月日2018年3月 8日
  • 定価本体1100円+税
  • 判型・ページ数B6判・187ページ
  • ISBN9784344032651
 

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