なかなか魅力的なタイトルの本だ。『世界一美味しいご飯をわが家で炊く』(青春出版社)。それ、興味があります、教えてください、という人は少なくないはず。
類書が多数あるに違いないが、本書は著者が別格だ。「江戸懐石近茶流」の宗家の嗣子として生まれて茶懐石の伝統を受け継ぐ。さらに東京農業大学で発酵食品学も学んでいるというから、そこらの料理研究家とはちょっと違う。
なにせ、「ご飯の炊き方」だけで100ページに及ぶ。無洗米を使って、お米は洗わずに炊飯器で寝る前にセット、朝起きると自然にご飯が炊けている、それを保温して夕食まで暖かいご飯。余ったら冷凍して、何週間も前のものを平気で食べる、などというお手軽主婦とは別次元の人なのだ。
著者はいう。美味しいご飯を食べるために、お米の銘柄や水にこだわる人は多いが、本当に大事なのは炊き方だと。もちろん推奨するのは釜や鍋で炊く方法。普通の人はまずそこで躓くが、慣れてしまえば炊飯器より短時間で簡単だと、著者はのたまう。ポイントは水加減、火加減、蒸らし。それぞれについて説きほぐす。お米をどう保存するか、お弁当への詰め方、冷めたご飯の食べ方なども伝授する。冷凍方法も書かれているから、昔ながらのこだわり話だけではない。
味噌汁についても詳しい。「世界一おいしい味噌汁の作り方」も紹介されている。知らなかったが、「味噌汁=おみおつけ」というのは漢字だと、「御御御付」と表記するそうだ。敬語の接頭語が三つも重なる。それだけ大事なもので、お吸い物よりも格上だったそうだ。味噌汁のお椀は、赤色が多いが、それはお椀では赤のほうが黒より格上だった名残だという。
一事が万事、伝統のうんちくをベースに最新の栄養学の話も混ぜて、レクチャーが進む。ご飯、味噌汁の後には「おかず」の話も登場する。かつて『聡明な女は料理がうまい』という本がベストセラーになったが、本書を読んでまず「聡明」になれば、料理もうまくなるかもしれない。日本人にはおなじみのご飯と味噌汁が、どのような歴史と価値を持っているのか、しっかりした知識としても知っておくことができる薀蓄本だ。
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