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これがバレたら「出世」できません

パワハラ・セクハラ・マタハラ相談はこうして話を聴く

 2015年に起きた電通女子社員の自殺事件は、各方面に波紋を広げた。過剰な残業だけでなく、上司によるパワハラも指摘されたからだ。電通は再発防止への取り組みを公表する中で、「パワハラとの指摘も無視できない。行き過ぎた指導がなされていたことを認識しております」と反省の弁を述べた。

 当時の社長は引責辞任に追い込まれ、会社は一時、国や地方公共団体の入札から外された。社内のパワハラは、その職場の中だけにとどまらない可能性がある。トップの責任や会社の経営にも影響を及ばす。訴訟やマスコミ報道で公表されると、会社のイメージも悪化する。企業にとってはダメージが大きい。

3人に1人がパワハラ経験

 本書『パワハラ・セクハラ・マタハラ相談はこうして話を聴く』(経団連出版)はパワハラ、セクハラ、マタハラと言われる職場の三大ハラスメントをいかにして円満に解決するか、その具体的な対応法を記したものだ。

 著者の野原蓉子さんは、教職を経て1976年日本産業カウンセリングセンター設立。厚生労働省セクシュアル・ハラスメント調査研究会委員などを歴任。臨床心理士で日本産業カウンセリングセンター代表取締役理事長も務める。

 厚生労働省の2017年度の実態調査による、過去3年間にパワハラ受けたという従業員は32.5%。その4年前の調査では25.3%だったから、少しずつ増えている。一方でパワハラ防止に積極的に取り組んでいる企業は22.5%にすぎず、全く取り組んでない企業は29.5%にものぼる。

ネットで公表される場合も

 本書は「ハラスメント相談の基本」「信頼が得られる面談のすすめ方」「被害者のヒアリングと行為者のヒアリング」「暴言を吐く課長へのヒアリング」などケースと立場に分けて、実際にヒアリングする側になった時の注意点が丁寧に解説されている。

 「上司から無視され、同僚から仲間はずれにされた」「先輩パート社員からパワハラを受けた」「パワハラのヒアリングを逆にパワハラと訴えられた」など個別のケースも詳しい。

 パワハラだけでなく、セクハラ、マタハラについても記されている。「男性社員による女性社員へのストーカー行為」「周りに伝えていない妊娠の事実を上司が漏らした」「上司が部下に妊娠の予定を訪ねた」などの事例が並ぶ。中には知らず知らずのうちに、やってしまいそうな危ない事案もある。

 世の中はネット時代。マスコミに出なくても、ネットで誰かに書き込まれ、それが回りまわって社内の相談口への通報になるということもある。管理職で仕事に没頭していると、「性的少数者」など、人権に関する世の中の新しい動向について常識が追い付かないこともある。パワハラ、セクハラ、マタハラはについて無知な管理職は、もはや生きて行けない時代だ。その意味でも休みの日は、たまにはゴルフなどの代わりに、本書などを読んでおいたほうがよいだろう。なにせ、「ハラスメント」がバレたら、出世はおぼつかないのだから。

  • 書名 パワハラ・セクハラ・マタハラ相談はこうして話を聴く
  • サブタイトルこじらせない! 職場ハラスメントの対処法
  • 監修・編集・著者名野原蓉子
  • 出版社名経団連出版
  • 定価本体1400円+税
  • 判型・ページ数A5判・142ページ
  • ISBN9784818517066
 

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