日本でも2年前からサービスを始めた米ストリーミング配信のネットフリックスが2017年10月に、全世界同時に公開したオリジナルドラマ「マインドハンター」の原作。映像化を機に日本で文庫版が刊行された。ドラマは、映画「セブン」「ソーシャル・ネットワーク」や「ゴーン・ガール」で知られるデヴィッド・フィンチャー氏が監督を務めたことからも注目を集めている。
主たる著者のジョン・ダグラス氏は、FBI(米連邦捜査局)行動科学課(のち捜査支援課)の元主任捜査官で1970年代後半から80年代前半にかけ、人物プロファイリングの手法を犯罪捜査の有力手段にまで高めたことで知られる。本書では、その考案から開発、成り立ちが実際の凶悪事件を通してナマナマしい筆致でつづられている。
犯罪者プロファイリングは、行動学や心理学を使って犯罪の性質や特徴を分析する一方、統計や犯罪データを集め、それらを総合して犯人像を推理、年齢や性格、体格、生活環境などについておおよその条件を導き出す。
連続殺人などの凶悪犯罪を行う人物は、著者によれば、動機に複雑な要素を含むため行動様式が混乱しており、罪悪感や自責の念などは正常な人の感情からはほど遠い。そのため「ときとして、こういう犯罪者をつかまえるには彼らと同じように考えることを学ぶしかない」
著者らプロファイリングに携わるFBIの職員は刑務所で、凶悪犯罪の服役囚らと面接を重ねてさまざまな資料を集めていく。犯行に手口、動機などを聞きだし、それまでに得ているプロファイリングのデータを使って、同種の犯罪には同じような心理や行動が伴っていないかを確認する作業をすすめた。とくに後半に多く引用される事件の事例は凄惨さが際立ち、プロファイリングを充実させることを加速させた側面の事情をうかがわせる。
犯罪者プロファイリングは、著者によれば、米国内での評価は高くメディアでは「現代のシャーロック・ホームズ」と呼ばれることも。「われわれがこの架空の人物にたとえられることは、最高の賛辞といってよい」と悦に入っている。
日本でプロファイリングが広く知られるようになったきっかけとして、元新聞記者の推理作家、トマス・ハリス氏の同名小説が原作の米映画「羊たちの沈黙」(1991年)が挙げられるが、同作品でスコット・グレンが演じたジョン・クロフォード主任捜査官はジョン・ダグラス氏がモデルだ。ダグラス氏はハリス氏の小説については、空想的なところがあると述べている。
週刊新潮(2017年12月7日号)の書評で本書について、アイドルやモデルの一方、ライター、書評家としても活動している西田藍さんは「彼らが起こす、身の毛もよだつような犯罪は、常人には理解できない。だが、日本語では殺人鬼、と呼ばれるような彼らをダグラスたちは、理解不能なモンスターとはせず、あくまでどのような人格をした人間であるかと分析していくのだ」と、淡々とした姿勢を指摘している。
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