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首席の秀才が億万長者になれない理由

残酷すぎる成功法則

 能力開発や成功の手段や方法を説く自己啓発書は書籍の一つのジャンルになっているが、箸の上げ下ろしなどまでことこまかく指示するものから、ある人物の成功体験、あるいはスピリチュアルなものまでと幅広いが、有用性の点からは"玉石混交"といえる。主張の裏付けや証明となるエビデンスがなく、本当にためになるのかモヤモヤ感が残ることも。本書は、エビデンスに徹底的にこだわってさまざまな「成功法則」を検証、啓発を導く可能性をグンと高めている。

人気ブロガーの全米ベストセラー

 著者のエリック・バーカーさんは、ビジネスからカルチャー、インターネットなどの話題を扱う米誌ワイアードに寄稿するライター。人間行動の研究でわかった最新の発見を盛り込みながら、仕事や普段の生活での効率化や活性化に役立つような記事を書いており、自ら「Barking up the wrong tree(間違った木に向かって吠える)」と題されたブログを運営し毎週、啓発的な読み物を配信している。ブログのタイトルは「お門違い」を象徴する英語のフレーズ。

 毎週1回読み物が配信されるブログには約30万人のフォロワーがおり、ウオールストリートジャーナル紙やニューヨークタイムズ紙で紹介され注目度は高く、バーガーさんは全米で人気にブロガーの一人だ。本書の監訳者、作家の橘玲さんの解説によると、ブログには「悲劇から立ち直る方法」とか「影響されやすさを止める方法」などと題された記事が並び、それらのブログ記事にはすべて追記があって、その記事を裏付けるエビデンスの引用元にリンクが明示されている。本書はその書籍版。米国では2017年5月に発売され、その直後から「全米ベストセラー」入りしたという。

エビデンスで証明

 著者は序章で「すでにあなたは、これまでの実体験や知り合いの話、書籍、ウェブ記事で、成功を目指すうえで役に立つ資質や戦術について多くを学んできたかかもしれない。ところが、真に確証が得られたものは一つもない。逆に、役立たないとして除外すべきものはたくさんある。私が本書で探究したいのはまさにそのあたりだ」と、啓発書としての独自性を強調。そして「大成功する人と一般の人を分けている科学的背景を探り、私たちがもっと成功者に近づくためにできることは何かを、最新のエビデンスから探る。場合によっては、成功者を真似しない方が賢明であると学ぶことになるだろう」と自信をみせる。

 本書は序章、第1~6章、結論―の構成。第1章「成功するにはエリートコースを目指すべき?」では「リスクを冒さず、親や学校から言われた通りにするのは得か損か」をテーマに「高校の首席」「ピアノの神童」などについて考察する。「なぜ高校の首席は億万長者になれないのか」のエントリーでは、高校の首席卒業者は(親や学校から言われた通りに勉強し)全科目にわたり成績優秀ではあるが、それがためにゼネラリストにとどまり、スペシャリストである億万長者にはなり得ないと主張。専門家らによる研究をエビデンスとして引用してその主張を裏付ける。米国の高校や大学で、日本でも英語系のサークルなどで行われている競技ディベートの手法に似ている。

 週刊新潮の「ビジネス捕物帖」で本書を取り上げた「某社書店営業」の田中大輔さんは「本書に出てくる邦訳本だけでも100冊近くある。自己啓発書をたくさん読んできた人ほど楽しめる本だ」と述べている。

 「エビデンス」は、それが欠如する記事はフェイクニュース(うそニュース、偽報道)とされ、情報発信が容易になっているインターネット時代になったからはとくに情報の発信者には欠かせぬピースになっている。エラい人の自慢話やうんちく話にしばしば感じられたうさんくささは、エビデンスの欠如が理由だった!?

  • 書名 残酷すぎる成功法則
  • サブタイトル9割まちがえる「その常識」を科学する
  • 監修・編集・著者名エリック・バーカー著、橘玲監訳、竹中てる実訳
  • 出版社名飛鳥新社
  • 出版年月日2017年10月25日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数B6判・400ページ
  • ISBN9784864105750
 

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