日本の人口の少子化、高齢化を懸念する指摘がされてから久しいが、有効な対策が打ち出されぬまま時間が過ぎている。深刻な危機到来まで漫然とカウントダウンを続けていればいいのか――。本書はこう警告を発し、カウントダウンの途中で何が起きるのかを年代順に列記。「静かな有事」への関心を促し、発想の転換による「10の処方箋」を提案する。
著者は日本人が、すでに"絶滅危惧種"になっていると指摘。「国立社会保障・人口問題研究所」の推計によると「100年もたたないうちに総人口は5000万人ほどに減る」。さらに計算上では、西暦3000年までには2000人になってしまうという。そうなる前に何か手当てがされていなければ、国家としては既に消滅しているかもしれない。
著者は産経新聞論説委員。人口政策を長年専門に取材・執筆をしており、同紙のほかにも著作活動を行っている。著者のこれまでの著作を含め、少子高齢社会について論じた書籍は書店に数多く並んでいるが、この問題に関して、時系列により体系的に解き明かすものはなく、本書が初の試みという。この試みが斬新だったせいか、類書を圧し、ベストセラーの上位をキープしている。
その試みに取り組んだのは"現実が無視されている現実"を目の当たりにしたため。人口問題に取り組む地方自治体を訪れた際、その自治体の首長から「都会からの移住者を増やしたいがどうすればよいか」と相談を持ちかけられた。著者はこれを「現実を見ていない典型例」とばっさり。返す刀で、人口問題は地域の問題ではなく一部の自治体がその増減に一喜一憂している場合ではないと斬り捨てる。
将来の「労働力不足」についての議論でしばしば、ロボットや移民が補完の手段として挙げられるが、これについても、短期的穴埋めにはなるかもしれないが将来の大規模な人口減には役には立たないと否定的だ。
高齢化の進行で社会保障費が増える一方、少子化が進んでその担い手が減る反比例。この問題の深刻さ度合が年を追いどんどん深まる。ある地域の人口問題の解消や、ロボットや移民の導入が進んでも、少子高齢化がもたらす危機に対する真の解決にはつながらない。
今後国内で急に出生率が上がったり、高齢化が止まることはあり得ない。本書では「小さくとも輝く国になるため」として「10の処方箋」を提案しているが、若い世代にとっては、これらをチェックしておく価値はあろう。
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