波、潮流、ハリケーン、古代人の埋葬砂、ナノテクノロジー、医薬品、化粧品から金星の重力パチンコまで、不思議な砂のすべてを詳細に描く。
砂は、さまざまな想像力をかきたてる。
砂にはロマンがあり、美があり、詩がある。そして、私たちの生活の一部でもある。
砂がなかったら、世界はどのようなものになっていたか想像してみたことがあるだろうか。
砂の粒子がたくさん集まると、砂特有の動きをするし、模様もできる。
砂が、どのように転がり、弾み、集まり、そして移動していくかという、
砂の動きに関する研究は、とても複雑で奥が深い。
さらに砂は、生物の大絶滅が地球の歴史のどの時点で起きたのかも物語る。
本書は、物理学、化学、地質学、数学、歴史、神話、文学、芸術、民話など、
さまざまな側面から砂に焦点をあて、
果てしなく広がる砂の世界を私たちに垣間見させてくれる。
これまで、ゆっくりと砂を見たことがなかったなら、
まず本書を読んで、その不思議な世界に思いを馳せてから砂を見てみると、
きっと新たな発見があるに違いない。
「本書は、砂について書かれた実に楽しい本だ。
子どものころ、砂浜で遊んだことのある人は多いと思うが、
本書を読めば、地球上にあるもっともありふれた物質が、
実に興味深い数多くの秘密を抱えていることを知るだろう」
リチャード・フォーティ(『生命40億年全史』『地球46億年全史』の著者)
原著『Sand』は2010年の3月に、米国自然史博物館のジョン・バロウズ賞を受賞している。
この賞は、1926年から毎年一回、科学的記述、実際の野外研究、新しい形の自然史という三つの条件を併せもつネイチャーライティングに贈られる最も権威ある賞のひとつである。
その受賞を伝える記事では、ウェランド氏が世界各地のエネルギー資源を扱う業界に身を置いてきたこと、米国とイギリスの地質学会および王立芸術協会の会員であることが紹介されている。
本書が砂についての科学的な知見に終始するのではなく、砂を利用する人の文化的な側面にも光を当てて、民話・数学・芸術・探検や、吸血鬼にまで言及している点が評価されたと伝えている。
科学者である著者のウィットに富んだ文章は、こうした幅広い興味にもとづいたものなのだろう。その面白さは、最後の索引にも反映されている。
書名:砂 文明と自然
著者:マイケル・ウェランド[著]林裕美子[訳]