資産として土地を所有している地主にとって、日本の高い相続税率は悩みの種。土地を活用せずに遊ばせたままでは「相続が三代続くと財産がなくなる」という言葉の通り、相続を重ねるごとに資産が減っていってしまう。
そうならないためにも、土地を活用し、土地から収益を得ることが必要、と説くのが『地主の決断 これからの時代を生き抜く実践知』(サンライズパブリッシング刊)だ。
今回は著者の松本隆宏さんにインタビュー。地主をとりまく厳しい環境と、それに負けないための方策、そして地主に必要とされる能力についてお話をうかがった。
――相続の実情が詳しく書かれていて、その苦労が垣間見えました。「相続が三代続くと財産がなくなる」という通説はあながちまちがいではないと指摘されていましたが、土地を活用せずに遊ばせてしまっている地主は少なくないのでしょうか?
松本:そういう地主の方も多いのではないかと思います。
――所有する土地を活用せずに空地のままにしてしまっているということですか。
松本:駅前に駐輪場や駐車場がよくあるじゃないですか。地主さんがこういうスペースを運営していることはよくあるのですが、更地や駐車場・駐輪場だと、土地の評価額が高いので相続税も高いんです。逆に賃貸物件を建てて人が住むと評価額は下がり、相続税も下に振れるわけです。
――相続税を下げたかったら所有する土地の評価を下げた方がいいわけですね。
松本:そうです。現金だと評価が一番高くて、土地になると評価が少し下がり、駐車場になるとさらに下がり、賃貸マンションだともっと下がります。駐輪場や場を運営するのが悪いことではないのですが、相続税を考えると割高になってしまう。この様なことをしっかりと理解している地主さんは少ないのではないでしょうか。
――また地主に「経営者の視点」を持つことの大切さを説いています。本書でいう「経営者の視点」とはどういったものなのでしょうか。
松本:企業の経営者は会社を発展させていくことを考えますよね。そのために中長期的な視点を持って、守りを固めるべき時期と前に出ていくべき時期を見極める。
地主の方もやるべきことは同じだと思うんです。先祖代々受け継いできた資産をできるだけいい形で子の代に託していくのが地主の仕事だとしたら、目先の相続税のことだけを考えるのではなくて子の代、孫の代のことも考えなければいけないと思っています。
――せめて、自分が親から受け継いだ資産を減らすことなく子どもの代に渡したいですよね。
松本:そうなんですけど、日本の相続税法からいって、何もしないと減っていってしまうわけです。土地を持っているということは、その土地で何かをすることもできるし、土地を担保に借り入れもできます。積極的に土地を活用していくことを考えた方がいいと思います。
――持っている土地があまり人が住むのに向かない場所にあったら、土地を担保にお金を借りて、都市部に賃貸物件を建てるといったこともできるわけですよね。
松本:まさにそうです。ただ、資産を守ることばかり考えている人はあまりこういう考えに至りません。でも、今、地主として土地をたくさん持っていたり資産があるのは、先祖のうちの誰かが一族の資産を大きく増やしたからで、けっして守るだけではなかったはずです。ならば、自分がそれをやってもいいわけじゃないですか。
<後編につづく>
(新刊JP編集部、監修/税理士法人 深代会計事務所 副所長・横山洋昌)
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