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食べ物で「免疫力アップ」は本当か?医師が語る免疫のウソとホント

  • 書名 『「いつも体調がよい人」になる方法 アレルギー専門医が見つけた最高の免疫のつくり方』
  • 監修・編集・著者名ヘザー・モディ著、日向やよい訳
  • 出版社名ユーキャン

私たちの体を病気から守ってくれる「免疫」。
テレビなどでも「免疫を高めて病気知らず」「免疫力が弱ると風邪をひきやすくなる」といったフレーズは以前からよく目にするものだったが、免疫力の重要性はコロナ禍で一層強調されるようになっている。

まして、コロナの感染症分類が「5類」に変更されたら、治療費の一部は自己負担となる。治療費が公費負担だからといってコロナに感染したい人はいないだろうが、自己負担ならなおさらだろう。自分の体を守るためにも複雑で精緻な「免疫」について知っておくことは決して無駄ではない。

■誰にでも効果がある「免疫力アップ法」はない

そもそも、「免疫」は日々の生活で「高める」ことが可能なのだろうか。もし可能だとして、誰でも同じ方法で高めることができるのだろうか?

先述の通り人間の免疫の仕組みは複雑で、頭で理解しても日々の体調管理に結びつけるのは難しい。だからこそ「〇〇を食べて免疫アップ」という単純化された言説が広まるのだが、免疫の仕組みを過度に単純化せずに理解しつつ、自分の健康づくりに役立てることもできる。それを目指すのがアレルギー専門医のヘザー・モディ氏の『「いつも体調がよい人」になる方法 アレルギー専門医が見つけた最高の免疫のつくり方』(日向やよい訳、ユーキャン刊)である。

実は、正しいときに正しいやり方で免疫系を支えてやるには、いくらかコツがいります。今回のコロナウイルスのような新規の脅威については特にそうです。(中略)免疫系は私たちの体内のあらゆる隙間や片隅に存在しています。いわば動く標的で、実質的な境界もなければ、ほかと完全に切り離して測定できるような特定の器官もありません。(P16)

まだわからないことも多く、測定することも容易でない「免疫」だからこそ、「強化する」といっても、その定義はあいまいになりがちだ。

ただ、わかっていることもある。本書では人間の免疫にはタイプがあり、一様に免疫を高める方法はないこと、タイプによっては免疫系を強化しても何らメリットはないことを指摘している。大切なのは自分の免疫のタイプを知ったうえで適切な生活習慣の導入を行うことなのだ。

■免疫は特定の方法で強化できるものではない

本書によると免疫には4つのタイプがある。
・くすぶり免疫タイプ...糖尿病やアルツハイマー病、心疾患など、体の炎症に基づく病気を抱えている人に多い。多すぎる炎症が問題の根源となっている。炎症を収束させ、落ち着かせることが解決策となる。

・見当違い免疫タイプ...関節リウマチ、膠原病などの自己免疫疾患を抱えた人に多い。自分自身の細胞や器官に向かうように方向を変えられた炎症が問題となる。食生活や毒素への曝露、ストレスなどを見直して、自分自身を攻撃している炎症を正しい方向に向けることが第一歩。

・過活動免疫タイプ...花粉症などアレルギーを多く抱えた人に当てはまる。問題の根本はホコリや花粉といった環境の正常な一部である無害な物質によって、あまりにも容易に引き金が引かれる炎症にある。

・衰弱免疫タイプ...一年に何回も風邪やインフルエンザ、気管支炎にかかる人が当てはまる。体内の炎症反応が適切に務めを果たせるほど迅速かつ効果的に起こらないことが問題となっている。

ただ、免疫は多元的なもので、「自分はこのタイプ」とはっきり分かれるわけではなく、「このタイプが自分は優勢」というようなぼんやりとした傾向があるに過ぎないし、一人の人に複数の傾向が認められることもある。

そして、多元的だからこそ、免疫は特定のやりかたで単純に強化できるものでもない(「衰弱免疫タイプ」だけは、あらゆる免疫「強化」法が役に立つ、とされている)。大事なのは免疫系の「バランス」であり、そのバランスのとり方が各免疫タイプで異なるのだ。

本書にはここで紹介した4つの免疫タイプのチェックテストが掲載され、自分の免疫タイプを把握したうえで自分にあった免疫バランスのとり方を知ることができる。そして忘れてはならないのが、4つのタイプの解説のすべてに出てきた「炎症」というワード。この炎症が免疫を理解するためのキーワードである。

炎症が免疫とどう関係するのか。そして炎症とは一般的なイメージ通り「悪いもの」なのか。本書を通してこんなテーマを読み解いていくと、私たちの体に欠かせない「免疫」についてもっと深く理解できるはずだ。

(新刊JP編集部)

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