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家庭で実践できる「子どもの思考力」を育む子育て

  • 書名 『デキる社会人になる子育て術 元ソニー開発マネージャが教える社会へ踏み出す力の伸ばし方』
  • 監修・編集・著者名鬼木一直
  • 出版社名幻冬舎

子を持つ親としては、我が子の学力や学歴は気になるものであり、できるだけいい学校に進学してほしいという気持ちもある。しかし、同時に「社会に出てからが本番」ということも重々承知しているはず。

受験を勝ち抜いて難関校と呼ばれる大学に入ることは「ゴール」ではなく、むしろ「スタート」だ。では、我が子を受験で終わらず、社会に出てから本領を発揮するようなバイタリティある人間に育てるには、どのような子育てをすればいいのか。

一昨年刊行され、子育て世代を中心に大きな共感を呼んだ、子育て教育本『デキる社会人になる子育て術 元ソニー開発マネージャが教える社会へ踏み出す力の伸ばし方』がいよいよ文庫化され、『文庫版 デキる社会人になる子育て術 元ソニー開発マネージャが教える社会へ踏み出す力の伸ばし方』(鬼木一直著、幻冬舎刊)として発売された。本書はそのヒントを授けてくれる。今回は著者で東京富士大学の鬼木一直教授にインタビューし、本当に子どものためになる家庭教育についてお話をうかがった。

■子どもの思考力は家庭で育つ

―― 一昨年、単行本刊行時にインタビューさせていただいた際は、社会人になってから活躍できる人を作るためには、高等教育以前の家庭教育が大事だとおっしゃっていました。その後、鬼木さんからみて日本の家庭教育に変化があったように感じられますか?

鬼木:コロナ禍もあって遠隔業務が多くなり、家庭教育に関心をもつ親御さんが増えていると感じています。しかし、家にいる時間が多くなったからといって暇なわけではないので、お母さんもお父さんも家庭教育に割く時間がなかなか作れないのが現状だと思います。本書は、そのような状況下でも親のちょっとした心がけで子育てを変えていければという考えに基づいた内容となっております。

――たしかに、そんなに子育てに割ける時間がなくても実践できる内容が書かれているように思います。

鬼木:そうですね。普段の生活の中で子どもと会話する時の言葉の選び方や考え方の部分がメインになっています。

私自身共働きであまり時間がないなかで子育てをしていますので、子育ての大変さはよく理解しています。もちろん共働きでなくても子育ての苦労は同じように感じていると思います。

忙しいなかでできたちょっとした時間に何をすればいいか、何を教えればいいかということがわからないという親御さんは多いと思います。学校を離れた家庭での時間をどのように過ごせばいいのかと悩んだ末に「わからないから勉強を見てあげようか」となりやすい。その延長で「とにかく勉強すればいい」「いい中学校、いい高校に入れたい」となっていく。

もちろん勉強を教えることはいいことですが、「その場限り」の教え方をしてしまうと、長い目で見たときに逆効果になることがよくあるんです。

――受験だけクリアできればいいという教え方をしてしまう、ということですか?

鬼木:それもそうですが、具体的には「答えを早く求めさせる教え方」をしてしまいやすいんです。「この問題はこういうパターンで解けばいい」というような「コツ」を教え込んでしまう。その結果、問題の本質がわからないまま、解き方だけを覚えることになります。これだとやっている方も面白くないですし、何より次に繋がらないんです。

――考える力を育てるのではなく、ノウハウを教えてしまうということですね。

鬼木:おっしゃる通りです。学習塾なども、問題をひたすら解かせるというような教え方ではなく、考え方に注目した教え方に変わってきてはいますが、まだノウハウを重視する傾向は変わりません。

「この問題はこのパターンだからこう解く」という教え方をしてしまうと、そのパターンの中にあるものは解けますが、パターンから外れるとまるで解けない。そして、社会に出るとパターン通りに解決できる問題なんて少ないじゃないですか。

――子育て関係の本の文庫化というのはあまり聞いたことがありません。文庫化についてどのようにお考えですか?

鬼木:このお話をいただいた時は、正直びっくりしました。文庫化というと、売れた小説をより多くの人に読んでもらうためにするもの、というイメージでした。

出版社の方からは「子育て本の文庫化の前例はほとんどありませんが、この本なら読者層を広げてみる価値がある」と言われました。家庭教育に関心を寄せる親御さんは非常に多いと感じており、広い層の方に手に取っていただけるのであれば、とてもありがたいことだと思います。

――単行本版はセブンネットショッピングの新刊子育て部門で1位を獲得するなどかなり好評でしたが、出版当時の反応はどうでしたか?

鬼木:本書は見開きの2ページで完結する形式にしたこともあり、「とても読みやすい」「実例が多くわかりやすい」「実践してみて効果が出てきた」など多くの感想をいただきました。

また、小さなお子さんをお持ちの方向けに書いたのですが、意外にもお子さんが大きくなった方、さらにはお子さんがいらっしゃらない方からも、「考え方がとても参考になった」「人生観が広がった」という意見をいただきました。私にとっても大変勉強になりました。

――先ほど「問題を解くコツだけを教える教育はよくない」というお話がありましたが、親としては子どもの学力はやはり気になるところです。本書はこの点について、「勉強しなさい」といってさせるのではなく、生活のなかに子どもが勉強したくなるような要素を散りばめる方法を推奨しています。たとえば、今は「数学的思考」を育てることが重視されつつありますが、この思考をつけるために家庭内でできることがありましたら教えていただきたいです。

鬼木:「問題集を買ってきて勉強させる」というようなやり方ではなく、日常の中に算数を持ち込んでほしいと考えています。

たとえば「3個のケーキをどうやって5人で分けるといいのか」、「行列に並んだ時に、あと何分で入れるのか」など、日常のシーンの中にも数学的な考え方を身につけられる場面はたくさんあります。ケーキであれば、「3/5」という分数を短絡的に出すのではなく、「半分ずつ分けると一人分足りないよね? どうしようか?」などイメージさせることが大切です。

行列であれば、列が定常状態になったと仮定して、1分間で後ろに何人並んだのかを数え、「並んでいる人数÷新たに並んだ人数」が概算の時間になります。このように、生活の中に算数をどんどん取り入れてほしいと思います。

――親の思考力も試されますね。

鬼木:そうだと思います。「子どもと一緒に考える」というのが一つポイントで、「いい子に育てたい」と願いながら親の自分は努力しないというのはおかしいじゃないですか。自分ができなかったことを子どもに託すケースをよく聞きますが、親も考える姿勢を見せることが重要だと思います。

勉強に限ったことではありませんが、子どもは一つの人格を持った人間なので、何を考えているのかを親が汲んで、話を聞いてあげることが大切です。親が「こうしなさい」と言っても、なかなかその通りにはなりません。勉強にしてもスポーツにしても、本人が納得してやることが大事で、それによってたとえば1位になれなかったとしても「どうすれば1位になれるのか」と子ども自身が考えますし、「そんなに努力しないといけないなら3位でいいかな」となったとしても、そこには子ども自身の決断があるので納得感が違います。

――また、「安易な結論で満足せずに納得いくまで考えるクセづけ」をするための方法もお聞きしたいです。

鬼木:まずは、すぐに答えを教えずに、「〇〇ちゃんはどう思うの?」と聞いてあげることが大切です。そして、それがなぜなのかをさらに質問してあげてください。

「なぜ、空が青いの?」と聞かれて、困ったときにスマホで調べるというのはあまりお薦めしません。答えが違っていても一緒に考えてみる、そして時間をかけて正解を見出していくことが"考えるクセづけ"に繋がると思います。

(後編に続く)

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