「上司の言うことがコロコロ変わって、振り回されるのがストレス」
「残業時間を減らせと言うわりには仕事の量が減らない」
などなど、誰にでも職場への不満の一つや二つはあるはず。だけど、それを自分の上司や経営者に面と向かって言えるかといったら、おそらく言えない人の方が圧倒的に多いだろう。
だから、居酒屋で同僚に、自宅で家族に、あるいは身元がバレないように注意しながら、SNSでその不満を吐き出す。これが「グチ」である。
こうした経緯を考えると、「グチ」は自分が勤める会社や組織に対するいつわらざる「ホンネ」であって、よくよく見てみると、その中にはその組織の問題を改善するヒントが隠されているはずなのだ。しかし、グチは一般的に悪いことだとされていて、言うと自分の評価を落とす。だから、みんな社内では口にしない。
『「グチ活」会議 社員のホンネをお金に変える技術』(日本経済新聞出版刊)は、社員たちの秘めたるグチをすくい上げ、企業や組織の改善と業績向上に生かすための一冊。
著者で組織改革コンサルタントの仁科雅朋氏は「愚痴には必ずその組織の本質が隠されている」として、企業が社員のグチを活用することで業績は向上すると断言。そのための方法を明かしている。
先述の通り、仁科氏が「グチ」を有用だとしているのは、そこに組織改善や業績向上のカギが隠されているからだ。問題はそのグチが、居酒屋や家庭など「オフレコ」の場から外に出ないこと。これではたとえ経営陣が組織の改革に前向きだったとしても、社員の本心を知ることはできない。ならば、「グチは悪いこと」だという思い込みを捨てて、普段から立場の上下や状況に影響を受けることなく、グチ(ホンネ)を言い合える組織にすることが、組織改革には必要なのだ。
そのための方法として、仁科氏が提唱しているのが「グチ活」会議である。
これは会議室や社外の研修センターなどクローズな場所で4~6人ほどで思う存分グチを発表する会議。
あくまでも組織の改善が目的なので、グチは発言するのではなく、付箋に書くことで記録しておき、問題点の洗い出しと解決の優先順位付け、解決のための計画策定というのが大まかな手順になる。
もちろん、この会議では年齢も役職も関係ない。思っていることを、誰にもおもねることなく発信することが何より大切となるため、守秘義務の徹底や人事評価に影響しないという確約、会議で出たグチを口外しないという保証などはマストだし、ホンネを言いやすい空気づくりや、グチを言うことで自分にプラスになるというイメージを持ってもらうことも大切な要素である。
とはいえ、これまでホンネを言えない風土だった会社が、会議だからといって急にホンネを言えるようになるとは限らない。一回だけでなく、二回目、三回目と繰り返し行うことで、徐々にホンネを出しやすい風土を養っていくことが必要かもしれない。
◇
会社で自分のホンネを言いにくいのだとしたら、普段の会社で行っているコミュニケーションは、会議の発言も、業務改善の意見も、部下への指導も、「タテマエ」ということになるし、ホンネで言い合える人間関係を築いている方が、組織としても強い。
グチを引き出すことで業績アップにつなげる手法や「グチ活」会議の詳しい手順など、本書から自分の会社や組織をいい方向に向けるヒントを学んでみてはいかがだろう。
(新刊JP編集部)
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