知らない土地での探索や、思いもかけない出来事、そして予期せぬ出会い。
数知れぬ偶然に彩られた「冒険」は、何歳になっても心を熱くさせてくれるものだ。
ロールプレイングゲームなど架空の世界の冒険もあれば、知らない土地への一人旅や、ちょっとした非日常体験も、一種の冒険だ。そしてもちろん、本の世界での冒険だってある。
『天風』(小山結夏著、幻冬舎刊)は、日常からつかの間抜け出して、私たち誰もが持っている冒険心を刺激してくれるファンタジー小説。ある過ちによって封印を解かれた二人の「神子」である龍子と蛇子。そして、彼らの行方を追う人々の人生模様が絡み合い、物語が回る。
僧侶の理京は、師の言いつけに背き、古くからの伝説で「災いをもたらす」とされる「神子」を西の山から連れ帰ってきてしまう。龍子と蛇子という二人の神子は、それぞれが体内に「玉」を持っている。玉は神子が10歳になった時に完成するが、二つの玉が出会った時、地上に甚大な災害が起こる・・・。
しかし、神子とされる二人の子はまだ赤子同然。あどけなく眠っている二人を、理京の師は壺の中に二人を封印したが、ふとした行き違いから、壺は売り払われてしまう。
数年後、故郷を家出同然の形で出立した少女・琴芽は、山の中で獣に襲われ、一人の少年に命を助けられる。その少年こそ、壺の封印を解かれ、自由の身となり山に身を潜めていた蛇子だった。一方、神子のもう一人でやはり封印から解き放たれた龍子は、都を自らの手で支配していた。
神子にまつわる伝説は、そもそも広く知られていた。「玉」の持つ不思議な力に惹きつけられた人々が、その行方を追い求めていた。蛇子はある老人に育てられたが、その老人もまた蛇子の体内にある玉を手に入れることで、老いることのない命を手に入れられると信じていた。そのことに気づいた蛇子は自ら老人のもとを去った。
ただ、蛇子には幼馴染の爽馬という友人がいた。老人が玉欲しさに蛇子を育てていたのではない。玉を欲したのは、むしろ、長生きをしていつまでも蛇子と暮らしたかったからだ。爽馬はそう言って、蛇子の誤解を解く。蛇子は自分を恥じて、老人を探す旅に出ることを決意する。広い世界を見たいと願っていた琴芽とともに。
まだ見ぬ世界へと足を踏み出した二人。しかし、その背後に、静かに後を追う者たちがいた。ほかならぬ理京である。「玉」に導かれた蛇子と琴芽、そして理京の行く手に立ちはだかる龍子。純真であり勇敢な少年・蛇子に対して、どこか影があり、凶悪な性質をひそめもっているようである龍子。二つの玉が出会った時に何が起こるのか?
友情と冒険で彩られた本書は、日常生活のなかで忘れかけているワクワク感を思い出させてくれるはずだ。
(新刊JP編集部)
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