甘酒といえば、お正月。初詣で神社に訪れた際に飲むものとイメージしている人も多いでしょう。じつは江戸時代、暑い夏を乗り切るための滋養強壮ドリンクとして親しまれていました。
そんな甘酒に注目したのが、調味料研究の第一人者として知られる東京農業大学教授・前橋健二さん。前橋さんは、猛暑が予想される今年の夏を乗り切るための切り札として、甘酒を使うことを次のように提案しています。
「俳句の世界において甘酒は、夏の季語に分類されていることをご存じでしょうか? これは甘酒が庶民に浸透した江戸時代に、夏場に好んで飲まれていたことに起因します。当時は現在に比べ、医学も食品栄養学も未発展で、甘酒に含まれる成分や健康効果について、科学的に理解されていたわけではありません。でも、江戸時代の人たちは、甘酒を飲むと体力の減退を抑え、暑さに耐え抜ける元気な体づくりに貢献してくれることを、実際に飲んで実感していたのだと考えられます」
さらに前橋さんは、現代になって科学的に証明されてきた甘酒の栄養について、著書『砂糖の代わりに糀甘酒を使うという提案』(アスコム刊)で、次のように述べています。
・大量のブドウ糖が疲労回復を強力にサポート
・レジスタントプロテインが、悪玉コレステロールを撃退
・アミノ酸の力でスタミナや筋力が高まる
・こうじに含まれる成分が中性脂肪を燃焼させる
これらは甘酒の持つ栄養のほんの一部で、実際にはなんと350種類以上の栄養成分が、含まれているそうです。
知れば知るほど深い甘酒のすごさ。ただ、これまで説明してきた甘酒は「酒粕甘酒」ではなく、すべて「糀甘酒」によってもたらされる効果です。
酒粕甘酒は日本酒を製造する過程で発生する白い固形物の酒粕を水で溶き、砂糖を加えて甘みをつけてつくったもの。1%未満と微量ながらアルコールが含まれており、香りにも若干お酒くささがあります。
一方、糀甘酒のつくり方はシンプルで、米こうじに炊いたご飯と水を混ぜて発酵させるだけ。発酵の過程で不思議なことにうまみが増し、さらには甘みが加わります。あとから砂糖を加えて甘みを出す酒粕甘酒に比べ、自然に生まれた甘みをもつ糀甘酒は、栄養も満点で、しかも砂糖の代わりに調味料として使えば、料理に砂糖と同様の甘みだけでなく、うまみと健康効果もプラスしてくれるそうです。
『砂糖の代わりに糀甘酒を使うという提案』では、共著者で、テレビで人気の料理研究家・あまこようこさんが、砂糖の代わりに糀甘酒を使った料理レシピを多数紹介しています。
今年の夏は、糀甘酒を普段の生活に上手にとり入れて、熱中症や夏バテを予防し、暑い日々をうまく乗り切っていきたいものですね。
(新刊JP編集部)
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