コロナ禍の最中、『ブ・デ・チ』(幻冬舎刊)という小説がドロップされた。
ブス・デブ・チビの頭文字をとって「ブデチ」というあだ名をつけられた女子中学生・神山エリ。しかし、彼女は泣きまねをしたり、悲しむふりをしたりしているだけで、いじめっ子たちを慈愛の眼差しで見つめていた。
エリの存在は「生きる意味」を強く考えさせられる。
彼女は一体何を考えているのか? そして、彼女の正体とは? そして、この物語は何を伝えようとしているのか?
物語を執筆した鶴石悠紀さんにメールインタビューを行った。
――まず、この『ブ・デ・チ』という物語の着想についてお伺いしたいです。モチーフとなったものはなんだったのでしょうか?
鶴石悠紀さん(以下、鶴石):私は、東京に単身赴任になった43歳のころから宗教哲学に興味を持ち、10年ほど朝晩の1時間の座禅を続けてきました。
5年ほど経ったとき、深夜に胸が苦しくて息が出来なくなり、目覚めてみると、胸の上にぼんやりと黄緑色に輝く玉が載っていたのです。ぱっと、手で払うと、それはあたかも猫かネズミのようにチョロチョロと逃げていき、私も思わず布団から飛び出して捕まえようと手を伸ばしたのですが、逃げてしまい、壁にぶつかって消えてしまいました。どう考えても、動物の霊体を見たのです。
それからしばらくして、通勤途中にある小さな公園に沢山の野良猫が住みついていて、それまでは、私が通りかかると逃げていた猫たちが、ニャーニャーと甘えるような鳴き声を出して何匹も寄ってくるようになりました。足にまとわりついて離れないので、しばらく背中をなぜてやったりしました。
このことがあってから、息苦しかった霊体は猫の浮遊霊だなと思えたのです。それ以来、霊界は存在するし、この物質次元以外の世界も存在すると信じられるようになりました。その後、神智学を色々読みあさり、霊界も多次元なのだということや、霊的な波動の力の違いで霊界次元が分かれているのだろうと思うようになりました。
――霊界について勉強し、知識を蓄えていった。
鶴石:はい。そして、人間が死んだら、その人の元々の霊的な進化の程度によって、戻る霊次元が違うと言うことも信じられるようになりました。人間の霊体は、霊界から物質次元に生まれ変わってきて、艱難辛苦や喜怒哀楽の様々な経験を通して、自己の霊性を高めていくことが産まれてくることの真理なのだと信じられるようになったんです。
しかし、この話をまともに説いたのでは、狂人か怪しい新興宗教教祖かと思われてしまうことも分かります。そこで、私が体験的に納得した世界の真理をそれとなく読み物として伝えておきたいと考えました。
――それが最初の本である『天意を汲めるか』ですね。
鶴石:そうです。『天意を汲めるか』も同じ意図を持って書いたのですが、いきなり霊的な世界に踏み込んだのでは、多くの人に敬遠されると思い、最も話題になっている東南海地震を場面設定に使いました。2作目の『霊性進化』では信じている真理について、まともに取り上げてみました。
そして、この4作目となる『ブ・デ・チ』は、主人公を身近な女子中学生にして、それでいて、人間が生まれてくる理由や目的をさりげなく伝えてみようと思ったんです。
――本作を執筆するにあたって気を付けた点はなんですか?
鶴石:宗教色や哲学観が強くならないように物語として構成しました。ですが、人は生まれ変わりながら、霊的に進化し向上することを目指して、生きているという点は、行間に含めています。
布石になったのは私の仏教観、哲学観を伝えたいということです。そして、着想は、いじめられている子供たちに、自分がなぜこの世に産まれてきたのかに気づいて、強くなって欲しいと考えたことから、「ブス・デブ・チビ」の女子中学生を取り上げたのです。
――この物語を書き上げるまで、どのくらいの時間を費やしましたか? また、その中で筆が止まってしまったり、書き直したりということはありました?
鶴石:文芸大賞に応募しようと思って書き出したので、6ヶ月くらい、仕事の合間に書きましたが、最初から構想は決まっていたので、途中で迷ったりはしませんでした。
(新刊JP編集部)
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