新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの働き方を大きく変えている。
7都府県に発令された緊急事態宣言で、政府は接触機会を8割削減と在宅勤務の徹底を呼び掛けており、「今日からリモートワーク」とSNSで発信する人も連日見られる。
リモートワークは、余計な横やりが入りにくいため、自分がすべき作業に集中しやすくなることがメリットの一つだが、その一方でコミュニケーション量が減ってしまい、「チームで働く」という感覚を覚えにくくなることもある。チームビルディングの方法に悩む管理職は少なくないだろう。
『リモートチームでうまくいく』(日本実業出版社刊)は2015年に出版された一冊で、早くからリモートワークを導入していた株式会社ソニックガーデンの倉貫義人氏が執筆している。
5年前に書かれた本なので、ツールの情報など少し古い部分もあるが、「リモートでもチームで働く」という本質的な部分は現在でも変わっていないため、大いに参考になる。
リモートワークにおいても孤独感を抱かずに、チームで働いているように感じるにはどうすればいいのだろうか。
倉貫氏がまず挙げるのが「雑談」と「ひとり言」だ。
オフィスにいれば、フロアや廊下などでちょっと近況を立ち話したり、食事などで誰が何をしているといったお互いのパーソナリティを認識する機会がある。
もちろん、ここで言う雑談とは、仕事に絡む話のこと。余計な話は生産性を落とすと言われているが、ちょっとした悩みだったり、考えていることを他者に吐露することで、探していた解決策が思わぬところからやってくることもある。
そうした「チーム感」を生むために、倉貫氏は「ひとり言」をチャットに書き込むことを推奨している。「おはよう」「今日は寒いね」といったものから、「あー全然思いつかない」「お昼行ってきます」みたいなひと言でも十分。それだけ「あの人も一緒に働いている」という存在感が生まれる。
また、その独り言から雑談に発展し、ちょっとしたアドバイスのやり取りが生まれたりもする。オフィス内でのひとり言は迷惑になるかもしれないが、リモートにおいてはお互いの存在感を認識し、チームで仕事をしているという感覚を持つことができるのだ。
また、管理職からすると、リモートワークはこれまでのマネジメントの形を変えなければいけない。
倉貫氏は個々人が「セルフマネジメント」をできるかどうかを重視しているという。
リモートワークでは画面の向こうにいるはずの相手がちゃんと働いているのかどうかを、目で見て把握することはできない。信頼を前提とし、どんな環境であれ、ちゃんと働いているということを信じられなければ、成り立たないのだ。
また、特にクリエイティブセンスが求められる仕事においては、細かく管理するマネジメントは適さないと言われている。なぜなら、管理コストが増大になるから。現場が今課題だと認識していることを自律的に取り組んで解決していくことが理想なのだ。
そのため、管理職はメンバー1人ひとりが自分で考えて行動できるような環境づくりをすることが大切になる。
この大きな変化は誰にとってもストレスだろう。そこで「ついていけない」と思っている人もいるかもしれない。慣れるまでに少しの時間はかかるはずだ。
特に新型コロナの影響で、ほとんど準備ができずにリモートワークを始めているという会社も少なくない。その一方で感染拡大を防ぐためにも、この変化を受け入れざるを得ない。リモートワークに対してもやもやしたものを抱いている人は、「リモートワークにおけるマネジメントの一つの形」を提示し、その先を見せてくれる力強い一冊である。
(金井元貴/新刊JP編集部)
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