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実家が一軒家だと相続争いが起きやすい!?相続3000件を手掛けたプロが語る「モメる相続」「モメない相続」とは

  • 書名 『プロが教える 相続でモメないための本』
  • 監修・編集・著者名江幡吉昭
  • 出版社名アスコム

誰でもいつかは直面するのが、親の死だ。
悲しいことだが、悲しんでばかりもいられない。残された家族の前に現実的な問題として立ちはだかるのが、「相続」である。

この相続、事前に準備しておくかどうかで、その後の家族関係や資産に大きな差が出る。これまで3000件を超える相続案件を手掛けてきた江幡吉昭氏は、著書『プロが教える 相続でモメないための本』(アスコム刊)で、相続をする側・される側双方に、相続についての基礎知識と今のうちにやっておくべき準備を解説している。

相続がきっかけで、家族仲が悪くなり、絶縁状態になる家族もいれば、円満に相続を終える家族もいる。両者を分けるものは何なのか。江幡氏にお話をうかがった。

■相続3000件を手掛けたプロが語る「モメる相続」「モメない相続」

――「財産がないから」「家族仲がいいから」という理由で、自分事としてとらえない人が多い相続ですが、『プロが教える 相続でモメないための本』は、そんな人に警鐘を鳴らす内容です。まず今回の本が生まれた背景にある「相続の現状」についてお話をお聞かせください。

江幡:平成27年に相続税の大増税があって以降、相続が多くの人にとって身近な問題になりました。それまでは相続税を納めている人って全体の4%くらいしかいなかったのですが、今は都内だと10%以上の方が相続税を納めていると言われています。

対象人数が倍以上に増えたことで、相続が「マーケット」として注目されはじめました。すると何が起きるかというと、色々な人が参入してくるわけです。その結果、有象無象がはびこる状況になっていて、「相続専門の●●です」とうたっている人の中には、「看板に偽りあり」の人もいる。そういう現状に問題意識を持っているというのが、今回の本を書いた背景としてあります。

――自分に相続が起こった時、まずは税理士や弁護士に相談すると思うのですが、相談する際に気をつけておくことはありますか?

江幡:第一に弁護士も税理士も「その顧客の状態を俯瞰的には見れていない」と分かった上で必要な相談をするべきですね。なぜかというと、自分の専門分野でしか顧客の状態を見れていないので、"部分最適全体不適"になっていることが非常に多いです。

例えば、弁護士に相続を依頼した場合では、「法律的に正しいが、税金について考えていない」ことが多々あります。また、認知症で判断能力が衰えた人の財産を後見人が守る成年後見制度(ここでは法定後見)があります。確かに財産は守られるのですが、生前贈与ができなくなったりと多くの制限がかかります。

そのため、「成年後見制度を使う前に相続対策をはじめ制限がかかることが多々ある」という説明を聞いていない方があまりにも多いですね。後から「そんなに制限されるなんて聞いてない!」と顧客が言っても後の祭りになるケースが多いです。

実務を経験していない人が形だけ整えても実際には機能しないことがよくあります。
そうするとどうなるか。「相続でモメなかったけど、税金はたくさんとられた」「相続は終わったけれど、土地の多くが税金として持っていかれた」と、なんとも後味の悪い思いをすることに。本来であればもっと良い提案があったはずなんです。結局は専門家の多くが「自分が判る範囲内でしか提案できていないことや、自分が儲かる提案」に走ってしまいがちなんですよね。

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――そうなると、いざ相続をするときに例えば、税理士をどうやって選べばいいのかと不安になってしまいます。選び方の基準などはありますか?

江幡:税理士であれば相続税の申告を年間どれくらいこなしているか、どれくらい依頼を受けているかという件数を聞くのが一番です。もちろん、中には正直に言わずに件数を「盛って」言う人もいるのでしょうが、色々と質問をしていくうちに、怪しい人はわかってくると思います。

あとは、事務所の名前を見るのも一つの方法です。「〇〇会計事務所」という名前のところは、もともと会計事務所で会計を主にやっていたところです。だから「相続専門の〇〇会計事務所」と名乗っていたら、その事務所はもともと相続業務をやっておらず、この分野が儲かるとわかって後から参入した可能性が高いといえます。良し悪しというより、経験が浅い可能性があります。

――相続がモメる条件としては、片方の親が残るためにガバナンスが効きやすい一次相続よりも、二次相続の方がモメやすいと聞いたことがあります。そして、兄弟姉妹の誰かが親の世話をしていて、財布を預かっていたりすると争いになりやすいとか...。

江幡:そうですね。親のお金を勝手に使いこんだりしていなければモメないのですが、中には使ってしまう人もいるので......。

過去に手がけた事例で、やはり被相続人の財産管理を姪が任されていたケースがあったのですが、10年近くにわたって合計1億円以上使っていたことがありました。信じられないような額ですが、世話をしていれば医療費や電気代を一時的に立て替えたりすることはあるじゃないですか。こういうことを続けているうちに、自分のお金と他人のお金の境界があいまいになってしまったのだと思います。

「これだけ世話しているんだから、タクシー代くらいは出してもらってもいいよね」「確定申告も代わりにやってあげているんだから、これくらいはもらってもいいよね」ということで、財産に手をつけはじめて、その額がだんだん大きくなっていったのでしょうね。

親の財産管理を子どもがやっていたりすると、こういうところで争いの種になりやすいとはいえます。ちゃんと管理しているかどうかというチェックが効きにくいところなので。

――「相続=相続税」というイメージが強いので、実家が資産家でもない限り「自分には無関係」と考えてしまいがちです。ただ、どんな家でも多少なりとも財産はあるはずですから、無関係とは言えないんですよね。

江幡:実家が都内で一戸建てだったりすると、安く見積もっても1000万くらいにはなりますから、親が亡くなって子どもたちが残されたとすると、それだけでもう相続の問題は出てきますよね。

よくあるのが、1000万円の価値がある実家と、預金が500万円あって、それを兄弟で分ける時に、片方が家を相続するなら、もう片方は「じゃあ預金をくれよ」となるわけですが、価値の合計は1500万円と考えると、なかなか双方が納得する落としどころを見つけられなかったりするんです

――不動産の相続税評価は時価とは違うというのもポイントですよね。

江幡:そうですね。地方ほど時価よりも相続税評価の方が高くなりがちで、都心は逆に時価の方が高くなります。

実はこれも結構モメるポイントになります。さっきのように兄弟で家と預金を分けるとなって、兄が預金で、弟が家をもらうとするじゃないですか。預金よりも家の方が高くて、平等を期すために弟から兄にいくらかお金を払うとなった時に、弟はできるだけ兄に渡すお金を少なくしたいから、時価と相続税評価のうち、安い方の価格で計算したいのですが、兄はたくさんもらいたいものだから高い方の価格で計算したい。そこでモメるということがあります。

――できるかぎりモメずに相続したいものですが、兄弟の誰かが亡くなるまで親の世話をしていたりすれば「ちょっと多めにもらう権利がある」と考えるでしょうし、相続人それぞれ経済状況も違いますし、なかなか難しい問題です。円満相続のためにポイントとなるのはどんなことなのでしょうか?

江幡:キーワードは「事前にやっとく。現状を知っとく。専門家に頼んで納得。」です。事前準備と、現状分析、専門家の手を借りることが大切、ということですね。

事前準備というのは主に遺言についてです。これはこれでモメるきっかけにもなるのですが、親の介護をしていたのなら、親が亡くなる前に他の兄弟よりも多めに財産を残してくれるようにはたらきかけて、遺言に残してもらうことが大切ですし、親が発言したことをメモに残しておくこともやっておくべきだと思います。相続がモメるかどうかは「準備が9割」です。

――「現状を知っとく」は、親の財産の現状を把握しておくということですか?

江幡:そうですね。相続税を払うくらいの財産があるのか。あるとしたらどれくらい払わないといけないのか。分けにくい財産があるかどうか、ということです。

子どもが思っている以上に親は財産を持っているものです。銀行預金しかないと思っていたら、ゆうちょに預金を持っていたり、生命保険に入っていたりということが、親の死後に明らかになって、子どもたちが色めき立つということが結構あるんですよね。

(新刊JP編集部)

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